電気工事士の採用が難しい理由と採用方法|資格別の探し方・未経験からの育て方・手法7つの比較表【2026年10月更新】

2026-10-07
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2026-10-07

電気工事士の採用が難しいのは、電気工事従事者の有効求人倍率が3.23倍(厚生労働省・2026年8月)と職業計の1.06倍を大きく上回るからです。資格別の探し方・未経験者の育て方・手法7つの比較表・求人票の書き方を解説します。(2026年10月更新)

電気工事士の採用はなぜ難しいのか?

電気工事士の採用が難しいのは、求人に対して応募する人が少ないからです。電気工事従事者の有効求人倍率は3.23倍で職業計の1.06倍の約3倍です(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」、2026年8月・常用・パートを含む)。

理由は1つではありません。倍率の高さに加えて、将来の不足見通しとベテランの引退が重なっています。仕事の中身が伝わっていないことと、他の業種との取り合いも要因です。自社の状況に近いものから順に見ていきましょう。

求人に対して有資格者が少ない

有効求人倍率は仕事を探している人1人に対して何件の求人があるかを表します。電気工事従事者が3.23倍ということは、1人の求職者に3件を超える求人が出ている計算です。職業計は1.06倍なので、ほぼ1人に1件の水準と比べると電気工事の求人は求職者を取り合う状態にあります。

同じ調査で、建設系の他の区分と並べると次のようになります(2026年8月・常用・パートを含む)。

職業の区分 有効求人倍率 読み取れること
職業計 1.06倍 求人と求職者の数がほぼ釣り合っている
電気工事従事者 3.23倍 職業計の約3倍の求人が、求職者を探している
建設従事者(建設躯体工事従事者を除く) 4.37倍 電気工事より、さらに求人が多い区分もある
建設・採掘従事者 計 5.10倍 建設系の職業全体で、人の取り合いが続いている

電気工事従事者は建設系の中では低めですが、職業計と比べれば3倍を超えています。なお、この倍率は電気工事の職業区分全体の数字です。第一種や第二種の資格を持つ人に限った倍率ではありません。

将来も不足が見込まれている

経済産業省の2019年時点の推計では、第一種電気工事士は高齢の資格者の退職によって約2万人が不足する見込みとされました(経済産業省の資料)。7年前の推計であり、現在の人数を示すものではありません。

それでも有資格者の確保が難しくなる方向にあることは、足元の倍率と合わせて読み取れます。「いずれ人が戻ってくる」と待つより、採用の進め方を今から整えるほうが現実的です。

ベテランの引退と若手の不足

建設業全体では就業者の高齢化が進んでいます。国土交通省の資料によると2025年の建設業は55歳以上が36.6%で、全産業の32.8%を上回ります。29歳以下は11.9%にとどまり全産業の17.0%より少ない状況です(国土交通省「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会 とりまとめ 参考資料集」、2026年4月)。

この数字は電気工事に限ったものではなく、建設業全体の姿です。それでもベテランが引退する時期に入れ替わる若手が足りない構図は、電気工事会社にも当てはまります。技術を教えられる人がいるうちに若手を迎えられるかどうかが、数年後の施工体制を左右します。

仕事の中身が求職者に伝わっていない

「電気工事士はきつい仕事ですか」という疑問は、検索でもよく見られます。天井裏や高所での作業、夏や冬の現場といった想像が先に立ちます。仕事の面白さや働き方の変化まで伝わっていないのが実情です。

建設業にも2024年4月から、時間外労働の上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間で、特別条項を結んだ場合でも年720時間以内などの上限があります(厚生労働省)。自社の休日や残業の実態を求人票に具体的に書くだけでも、求職者の印象は変わります。書き方は後の章(求人には何を書けば応募が増えるのか?)で扱います。

同業・設備管理・製造業の保全職とも取り合いになる

電気の知識を持つ人は、電気工事会社だけを選択肢にしているわけではありません。ビルや工場の設備を維持する設備管理の仕事や製造業の保全の仕事も、電気の資格や経験を活かせる転職先です。

設備管理や保全の仕事は勤務先が固定されて移動が少ないなど、働き方の面で電気工事会社と違いがあります。求職者が比べる相手は同業の工事会社だけではないと考え、自社の仕事の特徴を言葉にしておくことが応募を集める土台になります。

資格によって、採用の対象はどう変わるのか?

第二種電気工事士は住宅や小規模な店舗の工事ができ、第一種電気工事士は最大電力500キロワット未満の工場やビルまで工事できます。どちらも試験に受験資格はありませんが、第一種の免状の交付には3年以上の実務経験が必要です。

まず自社の工事に、どの資格が必要なのかを整理しましょう。資格の範囲は電気技術者試験センターと電気工事士法に基づきます。次の表は採用の対象を考えるための整理です。

資格 できること 取得の条件 採用するときの考え方
第二種電気工事士 住宅や小規模な店舗など、600ボルト以下で受電する設備の工事ができる 試験に受験資格はなく、試験は年2回(上期と下期)実施される 住宅や小規模店舗の工事が中心なら、有資格者を探せる。資格を持たない若手に取得を促す選択肢もある
第一種電気工事士 第二種の範囲に加え、最大電力500キロワット未満の工場やビルなどの工事ができる 試験に受験資格はないが、免状の交付には3年以上の実務経験が必要(2021年4月から。以前は原則5年) 工場やビルの工事を任せたいときに探す。免状を持っているかを、選考で確認する
認定電気工事従事者 工場やビルなどの600ボルト以下の部分の工事(簡易電気工事)ができる 第二種の資格者などが講習を受けて認定される 第二種の有資格者に講習を受けてもらい、任せる工事の幅を広げる使い方もある
電気工事施工管理技士 工事をする資格ではなく、工事の工程や品質、安全を管理する資格である 第一次検定は1級が年度末に19歳以上、2級が17歳以上で受検できる(2024年4月施行の見直し後) 現場の管理を担う人を探すときの条件になる。募集の考え方は別の記事で整理している

電気工事施工管理技士は、工事そのものを行う電気工事士とは役割が異なります。施工管理の採用については、施工管理の採用が難しい理由と採用方法で詳しく解説しています。本記事は現場で工事を行う電気工事士の採用に絞って進めます。

資格の整理で見落としやすいのは、免状の有無です。第一種の試験に合格していても、免状の交付には実務経験が要ります。求人票に第一種を条件として書くなら、免状を持っているかを確認する前提で考えましょう。

募集を始める前に何を決めておくべきか?

募集の前に決めておくのは4つです。経験の段階・任せる工事の種類・資格取得の支援・給与と見習い期間の扱いを先に決めます。たとえば第一種を求めるなら免状に3年以上の実務経験が要るため、探す相手は経験者に限られます。

この4つが決まっていないまま募集を出すと、応募が来ても誰を面接に呼ぶのか判断できません。採用の前提を決める作業は、求人を出す前に1人ではなく社長と現場の責任者で一緒に進めましょう。そうすると後から考えが食い違うことを防げます。

1. 経験者か、第二種を持つ若手か、未経験者か

最初に決めるのは、採用する人の経験の段階です。第一種を持つ経験者は即戦力ですが、人数が限られて取り合いになります。第二種を持つ若手なら、現場で経験を積んで第一種を目指してもらえます。資格のない未経験者は、育てる前提で迎える形になります。

どれか1つに絞る必要はありません。ただし、全部を同じ求人で呼びかけると誰に向けた募集か伝わりにくくなります。主に探す相手を決め、ほかの段階の人も応募できる余地を残す形がおすすめです。

2. 任せる工事の種類

電気工事と言っても、住宅の屋内配線とビルや工場の電気設備では必要な経験が違います。再生可能エネルギーの設備や通信の工事も、また別の経験が求められます。候補者が見たいのは「入社したらどの工事をするのか」です。

任せたい工事が決まれば、必要な資格と経験が決まります。工事の種類によって、候補者のいる場所も変わります。住宅の工事なら地域に根ざした求人が合い、ビルや工場の工事なら設備に関わった経験者にも届く媒体が合います。

次の表は工事の種類ごとの経験者の勤め先と、求人で伝えるとよいことを整理したものです。勤め先は一般的な整理であり、会社や地域によって異なります。

工事の種類 経験者が多い勤め先 求人で伝えること
住宅の屋内配線 一般に、住宅の工事を請け負う地域の電気工事会社で働いていた人が多い 担当するエリアと1日に回る件数、住んでいる人と直接話す機会があることを書く
ビルや工場の電気設備 一般に、設備工事会社やビルの設備に関わる会社で働いていた人が多い 現場の規模と工期、扱う設備の種類、第一種が必要かどうかを書く
再生可能エネルギーや通信の設備 一般に、設備の施工を専門とする会社で働いていた人が多い 扱う設備の種類と、未経験の工事を覚えるための教育の仕組みを書く

表のとおり、同じ電気工事でも探す人のいる場所と候補者が知りたいことは変わります。住宅の工事なら地域や1日の流れが、ビルや工場の工事なら現場の規模や扱う設備が応募を決める材料になります。

自社の工事が複数にまたがる場合は、入社後にまず任せる工事を中心に書きます。ほかの工事は「経験を積んだあとに広げていく」と段階で示すと、誰に向けた募集かが伝わりやすくなります。

3. 資格取得をどこまで会社が支えるか

資格を持たない人を迎えるなら、受験費用や講習費用の負担を決めます。試験前の勉強時間の確保と、合格後の資格手当も決めておきます。どこまで会社が支えるかは、求人票に書く内容そのものになります。

支援の中身を決めるときは、続けて働いてもらうための仕組みとしても考えます。資格を取って転職されるのを心配する会社は多いものの、支援の条件は隠さずに見える形で示すほうが応募も定着も得やすくなります。

4. 給与の形と見習い期間の扱い

見習い期間の給与をどう設計するかは、未経験者を迎えるときの大きな論点です。資格を取るまでの給与と取ったあとの給与の差を、段階として示せるようにしておきます。

月給の形か日給の形か、現場の手当をどう扱うかも決めます。給与の中身は応募者が最初に見る項目の1つです。自社の給与の決め方と、資格や経験で上がる仕組みを書けるように準備しましょう。

採用する人の像を言葉にする方法は、採用ペルソナの作り方で解説しています。

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電気工事士の採用にはどんな手法があるか?7つの比較

電気工事士の採用で使われる主な手法は、ハローワーク・求人検索エンジン・特化型の求人サイト・人材紹介・学校や訓練校・リファラル採用・自社の採用サイトの7つです。経験者は人材紹介とリファラル採用、若手は学校との連携が中心です。

手法ごとの向き不向きを次の表にまとめました。

手法 向いている相手 注意すること 社内の工数
ハローワーク 地域の経験者や、仕事を探している若手に出会える 求人票の書き方で応募数が大きく変わる 少ない(求人票の作成と応募対応)
求人検索エンジン 転職先を検索している人に、広く届けられる 掲載しても、検索で上位に出なければ見られない 中程度(求人の更新と応募への返信)
電気工事・建設に特化した求人サイト 電気工事の仕事を探している人に、絞って届けられる サイトごとに、登録している人の層が違う 中程度(求人の作成と応募への返信)
人材紹介 資格を持つ経験者を、短い期間で探したいときに使える 費用は採用が決まってから発生し、年収に応じて高くなる 中程度(条件の共有と面接の調整)
工業高校・職業訓練校 電気を学んだ新卒や訓練修了者に、直接会える 求人の提出や訪問の時期が、年ごとに決まっている 多い(学校との関係づくりを続ける)
リファラル採用・協力会社からの紹介 社員や協力会社の知り合いから、人柄の合う人を迎えられる 紹介を頼む相手に、探している人の像を具体的に伝える必要がある 少ない(声がけと紹介後の面談)
採用サイト・SNS 応募前に仕事や現場を知ってもらい、納得して応募してもらえる 効果が出るまでに数か月かかり、更新を続ける必要がある 多い(写真や動画の用意と更新)

職種を問わない採用手法の全体像は、採用手法の比較で一覧にしています。

ハローワーク

ハローワークは費用をかけずに求人を出せる手段です。地域に根ざした電気工事会社にとっては、まず登録しておきたい窓口になります。

ただし、求人票が簡素だと他社との違いが伝わりません。仕事の内容や現場の場所、休日と資格手当の金額まで具体的に書くことが応募数を左右します。応募が来たら、すぐに返信することも大切です。

求人検索エンジン

求人検索エンジンは複数の求人サイトの情報をまとめて検索できるサービスです。仕事を探している人が最初に使うことが多く、電気工事の求人も検索されています。

検索の結果に出る求人は職種名・勤務地・資格などの言葉で見つけられます。求人のタイトルに「電気工事士」だけでなく、工事の種類や勤務地を入れておくと探している人に届きやすくなります。応募への返信が遅れると辞退につながるので、運用の手間は見込んでおきます。

電気工事・建設に特化した求人サイト

電気工事や建設の仕事に絞った求人サイトは、登録している人が最初から電気工事に関心を持っている点が強みです。経験者や、これから電気の仕事に就きたい人に絞って届けられます。

サイトによって、登録している人の層や掲載の費用が違います。複数を比べて、自社が探している経験の段階の人が多いサイトを選びます。1つのサイトで結果が出なければ、掲載内容と合わせて見直しましょう。

人材紹介

人材紹介は資格を持つ経験者を短い期間で探したいときに向く手法です。紹介会社が候補者を探し、条件の合う人を紹介してくれます。

一般に、入社する人の年収の30〜35%程度が目安とされます。たとえば年収600万円の人が入社するなら、180万〜210万円ほどです。採用が決まったときに費用が発生する仕組みが一般的なので費用の見通しは立てやすい反面、1人あたりの負担は重くなります。費用の考え方は採用コストの内訳と削減方法で解説しています。

紹介を受けるときは、探している人の像と見送った理由を紹介会社へ伝えます。合わない紹介が続くときは、要件の伝え方から見直しましょう。

工業高校・職業訓練校

工業高校や職業訓練校は、電気を学んだ若手と直接つながれる窓口です。学校に求人を出し、先生を通じて生徒に会社を知ってもらう流れが中心になります。

高卒の採用は求人を出せる時期や選考の開始日が決まっています。流れを知らないまま動くと、時期に間に合いません。年間の動きは高卒採用のスケジュールで整理しています。学校との関係は一度で終わらず、毎年の訪問で築いていくものです。

リファラル採用・協力会社からの紹介

社員の知り合いや日頃から付き合いのある協力会社からの紹介は、人柄や仕事ぶりを知ったうえで迎えられる手法です。現場の仲間が紹介してくれた人は仕事の中身を事前に聞いているため、入社後のずれも起きにくくなります。

紹介してほしい人の像を具体的に伝えることが出発点です。「電気の資格を持つ人」より「住宅の配線を2年以上経験した人」と伝えるほうが、相手は思い浮かべやすくなります。制度の設計はリファラル採用の進め方で紹介しています。

採用サイト・SNS

自社の採用サイトやSNSは、応募前に仕事や現場の様子を知ってもらう手段です。施工中の現場の写真・社員の1日の流れ・先輩が若手に教えている場面を見せると、仕事のイメージが具体的になります。

効果が出るまでには時間がかかります。数か月は更新を続ける前提で始めましょう。ほかの手法で応募した人が会社を確かめる場所にもなるため、応募の質を高める役割もあります。

経験の段階ごとの、手法の組み合わせ例

手法は1つに絞らず、探す人の経験の段階に合わせて組み合わせると探したい人に届きやすくなります。ここでは会社の状況を3つに分けて例を示します。

第一種を持つ経験者を探す会社は、人材紹介とリファラル採用を組み合わせます。第一種を持つ人は転職を考え始める前から声がかかりやすく、求人を見て応募を待つよりも紹介会社や知り合いを通じて会うほうが接点を持ちやすいためです。

第二種を持つ若手を探す会社は、特化型の求人サイトと求人検索エンジンを組み合わせます。電気工事に絞って仕事を探す人と、広く検索する人の両方に届けられるためです。

未経験者を毎年迎える会社は、工業高校・職業訓練校と採用サイト・SNSを組み合わせます。学校で出会った生徒が入社前に会社の現場や先輩の様子を確かめられる場所があると、納得して応募してもらえるためです。

どの組み合わせでも、ハローワークは費用をかけずに併用できます。1つの手法で結果が出ないときは、組み合わせを見直してみましょう。採用手法の全体像は前出の採用手法の比較で確認できます。

未経験者を採用して育てるにはどうすればよいか?

未経験者を迎えるときは、入社から3年間で任せる仕事と取る資格を段階で示します。第二種電気工事士は受験資格がなく、第一種は免状の交付に3年以上の実務経験が必要です。そのため3年を1つの区切りとして計画を立てると説明しやすくなります。

次の表は入社から3年間の育成計画の例です。実際の中身は自社の工事の種類と現場の人数に合わせて調整してください。

時期 任せる仕事 目指す資格 会社が用意すること
入社〜1年目 先輩の補助として現場に入り、工具の扱いと安全の基本を覚える 第二種電気工事士を目標にする 試験の勉強時間を確保し、受験費用を支える。教える先輩を決める
2年目 簡単な配線作業を、先輩の確認のもとで任せる 第二種を取得し、次の資格を考える 任せた作業の出来を、先輩が一緒に確認する場をつくる
3年目以降 小規模な現場を、先輩の確認のもとで担当する 第一種の免状の申請を視野に入れる 実務経験の記録を残し、任せる工事の幅を広げる計画を話し合う

第二種の試験は年に2回(上期と下期)あります。入社の時期と試験の日程がずれると、合格までの期間が延びます。入社の時期に合わせて、最初の受験機会を一緒に決めておくとよいでしょう。第一種の免状に必要な実務経験の数え方は、電気技術者試験センターなどの公表資料で確認してください。

資格取得の支援で決めておく項目

資格の支援は入社前に項目を決めて、求人票と面接で同じ内容を伝えます。決めておく項目は次の5つです。

  • 受験費用:受験料を会社が負担するのか、本人が負担するのかを決める。何回目の受験まで負担するかも合わせて決める
  • 講習費用:認定電気工事従事者の講習など、費用がかかる講習を会社が負担するかを決める
  • 勉強時間:勤務時間内に勉強する時間を設けるのか、試験前に休みを取れるのかを決める
  • 合格後の手当:資格ごとに、合格後の手当を月額で出すのか、一時金で出すのかを決める
  • 不合格だった場合の再受験の扱い:再受験の費用を負担するのか、勉強の時間をどう確保するのかを決める。不合格を責める空気をつくらないことも大切

決めた内容は社内の資料として1枚にまとめておきます。担当の先輩と本人が同じ紙を見ながら受験の予定を立てられるので、費用や手当をめぐる食い違いを防げます。

教える人を決め、教え方をそろえる

未経験者の成長は教える人に左右されます。現場ごとに教え方が違うと、新人は何を覚えればよいか迷います。最初の半年は誰が何を教えるのかを決め、教える内容を紙に書き出しておきます。

教える先輩にも負担がかかります。教えた分の時間を現場の工程の中で確保できるように予定を組みます。入社後の受け入れ全体の設計は、オンボーディングの進め方で紹介しています。

見習い期間の不安を取り除く

未経験で入社する人が最も気にするのは、いつ一人前になれるのかとその間の収入です。資格を取ったあとに給与や任せる仕事がどう変わるのかを入社前に見せておきます。

3年目に何を任せるのかが見えれば、新人は目の前の見習いの時間にも意味を感じられます。見通しを示すことがそのまま定着の対策になります。

求人には何を書けば応募が増えるのか?

求人に書くべき項目は、工事の種類・現場の場所・休日と残業・資格手当の金額・工具や車両の支給・資格取得の支援の6つです。候補者は毎日の働き方を想像できる求人に応募します。

求人票の内容は応募する人が最初に見る情報です。ここが具体的でないと、他社の求人と比べても選ばれにくくなります。

候補者が見る項目

  • 工事の種類:住宅の配線なのか、ビルや工場の設備なのか、再生可能エネルギーや通信なのかを書く。入社後にどんな現場で働くかが伝わる
  • 現場の場所と直行直帰の可否:どのエリアの現場に行くのか、事務所に寄らず現場へ直行できるのかを書く。通勤の負担が分かる
  • 休日と残業:休日の日数と、繁忙期の残業の実態を書く。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限が適用されたため、自社の運用を具体的に示すと安心につながる
  • 資格手当の金額:資格ごとに、手当がいくらかを書く。「資格手当あり」だけでは、取得する意欲につながりにくい
  • 工具や車両の支給:工具を会社が用意するのか、自分で買うのか、現場へ行く車は会社のものを使うのかを書く
  • 資格取得の支援:受験費用や講習費用の負担、勉強の時間の確保、合格後の手当を書く。前の章で決めた内容をそのまま書く

仕事の価値を言葉にする

電気工事の仕事は暮らしや事業を支える仕事です。それでも求職者には地味に見えて、価値が伝わらないことがあります。ここでは近い業種の例を紹介します。

HeaRが支援した、ガスの保安点検と住宅設備工事を行う会社(従業員約300名)の例です。暮らしに欠かせない仕事なのに、求職者には価値が見えにくいことが課題でした。HeaRは毎日の暮らしの動作に置き換えて仕事の価値を言葉にする採用コンセプトを策定しました。採用サイトでは社員インタビューで仕事を具体的な場面で紹介し、面接官がコンセプトを自分の言葉で話せるようにする取り組みも提供しました。

結果として内定承諾率と選考の通過率が上がり、人材紹介会社からの紹介数が約3割増えました。電気工事士だけを対象にした支援事例ではありませんが、暮らしを支える設備の仕事という点で考え方は近いものです。

電気工事なら、たとえば「新しい店に明かりを灯す」「工場の生産を止めない」のように工事の結果を暮らしの場面で言い換える方法が考えられます。仕事の価値を言葉にして面接官も同じ言葉で話すことが、応募から入社までの一貫性を生みます。

書かないほうがよいこと

実態と違うことは書かないことが第一です。入社後に求人との違いが分かると、早い時期の退職につながります。休日や残業、現場の厳しさはできる限り実際のとおりに書きます。

「誰でもできる」「やる気があれば大丈夫」といった言い回しも、避けたほうがよい表現です。仕事の中身が伝わらず、電気の資格に関心のない人まで集まる原因になります。何ができるようになるのかを具体的な資格や仕事の名前で書きましょう。

選考と入社後で人が離れないようにするには?

人が離れないためには、応募への返信を早くして面接を1〜2回に絞ることが要点です。建設業の新規学卒者の3年以内離職率は高卒で41.4%、大卒で30.5%あります(厚生労働省、令和4年3月卒業者)。

数字の出典は厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月公表)です。全産業の高卒37.9%と比べて高卒は高く、大卒は全産業の33.8%を下回ります。高卒で入社した若手が離れやすい傾向があるため、入社後の関わり方も大切です。

応募への返信を早くする

応募者は複数の会社へ同時に応募しています。返信が遅い会社はそのまま他社に決まってしまいます。応募を受けたらその日か翌営業日に返信し、面接の日程を提案する流れを決めておきます。

現場に出ている時間が長いと、返信が遅れがちです。応募の通知を受け取る担当者を決めて、現場の人が不在でも返信できる体制にしておきましょう。選考にかかる日数と辞退の関係は、採用リードタイムの平均と目標日数で解説しています。

面接は1〜2回に絞り、現場を見てもらう

選考の回数が増えるほど期間は長くなり、その間に他社で決まる人が出てきます。面接は1〜2回に絞り、1回目は短い面談で仕事の説明と相手の希望を聞く場にします。

現場の見学を選考に組み込むのも効果的です。候補者は実際の現場の雰囲気や、一緒に働く人を見られます。気軽に話せる場として、カジュアル面談の進め方も参考になります。面接での質問は面接で聞くべき質問で整理しています。

面接では何を確認すればよいか

電気工事士の面接で確認する中心は3点です。資格の状態と経験した工事、安全への考え方を聞きます。どれも履歴書だけでは分かりにくいので、面接官が候補者に具体的に聞きます。

  • 免状と講習:第一種電気工事士の免状を持っているか、認定電気工事従事者の認定を受けているかを確認する。第一種は免状の交付に3年以上の実務経験が必要なため、試験に合格しただけの人と区別して聞く。質問例は「お持ちの資格は、免状が交付されているものと、これから申請するものに分けて教えてください」
  • 経験した工事の種類と、本人が担当した作業:住宅かビルや工場かに加えて、そのうち本人が自分の手で行った作業を聞く。同じ現場にいても、補助だった人と任されていた人では経験が違う。質問例は「直近の現場で、あなたが自分で配線した範囲を教えてください」
  • 安全への考え方:ヒヤリとした経験と、そのあと何を変えたかを聞く。現場の安全は、資格の有無と同じくらい大切な確認項目になる。質問例は「危なかったと感じた経験があれば、そのあと自分の作業をどう変えたか教えてください」

質問のあとは答えをさえぎらずに最後まで聞きます。候補者が答えに詰まったときは、聞き方を変えてもう一度たずねます。聞いた内容は現場の責任者にも共有して、一緒に判断しましょう。面接の質問の組み立て方は、前出の面接で聞くべき質問もあわせてご覧ください。

内定のあと、入社までを空けない

内定を出してから入社までに期間が空くと、その間に辞退が出ます。内定のあとも連絡を続け、入社前に現場の人と顔を合わせる機会をつくりましょう。辞退を防ぐ具体的な方法は、内定辞退を防ぐ方法で紹介しています。

入社後の最初の数か月を支える

入社して間もない時期は、不安が大きい時期です。毎週短い時間でも先輩と話す場を設けると、困りごとを早く拾えます。教える内容と見習い期間の見通しを入社前に示していれば、不安も和らぎます。

AIを使うと電気工事士の採用のどこが速くなるか?

AIが役立つのは、応募への返信・面接日程の調整・求人票の下書きといった定型の作業です。HeaRのAI-RPOの運用設計では月30件の面接日程の調整が、メールの往復で7〜8時間かかっていたものから1時間前後になる試算です。

電気工事会社では総務や経理の担当者が採用を兼ねている場合も多く、現場の対応で返信が遅れがちです。応募を受けた直後の連絡こそ定型の作業なので、AIに向く場面です。工程ごとに、人とAIの分担を整理しました。

工程 人だけで進める場合 AIを使う場合 人が確認すること
応募への返信 現場や事務の合間に、1件ずつ返信を書く 応募を受けた直後に、定型の返信をAIが下書きする 候補者の状況に合った内容になっているか
面接日程の調整 メールで候補日を何度もやり取りする 候補日の提示と確定をAIが進める うまく調整できなかった候補者への対応
求人票の下書き 一から書き、他社の求人を見ながら直す 工事の種類や条件をもとに、AIが下書きをつくる 実態と合っているか、金額や休日に誤りがないか
応募書類の整理 担当者が経歴を全部読んで要点をまとめる 経歴の要点と、求める条件との一致度をAIが整理する 判断の最終決定と、見送る理由の妥当さ

ただし、誰を採用するかを決めるのはAIではなく人です。資格や経験の確認・面接での人柄の見極め・条件の提示は人が担います。AIの出力は人が確認することを前提に、返信や日程といった時間のかかる部分から任せると現場や事務の負担が下がります。AIを使った採用代行の詳細は、AI-RPOのサービス紹介をご覧ください。

採用代行(RPO)や採用コンサルティングは、どんな会社に向いているか?

採用代行(RPO)が向いているのは、目安として年に5名以上を採用する会社や複数の拠点で同時に募集する会社です。HeaRは累計250社以上を支援してきましたが、採用人数が少ない会社にはまだ合わない場合もあります。

採用代行は採用の実務を外部の担当者が代わりに進めるサービスです。費用や運用の形は採用代行の費用相場で解説しています。ここでは向いている会社と自社で進めたほうがよい会社を分けて書きます。

向いている会社の条件

  • 年に5名以上を採用する:採用の実務が年間を通じて発生する。応募への返信、日程の調整、求人の更新を外に任せる意味が大きい
  • 複数の拠点や部門で同時に募集する:拠点ごとに採用の進め方がばらばらになりやすい。窓口を1つにそろえると、情報を管理しやすい
  • 施工管理や営業も同時に採用する:職種ごとに募集の設計が必要になる。採用の担当が兼務で手が回らない状況を解消できる
  • 採用の担当者が兼務で、手が回らない:総務の担当者が現場の対応も兼ねている会社は、応募への返信が遅れやすい

まだ自社で進めたほうがよい会社

  • 年に1〜2名の採用が中心:採用代行の費用に見合うほどの作業量が出にくい。リファラル採用やハローワークで、自社で進めるほうが現実的
  • 採用の担当者が決まっておらず、仕事の内容も固まっていない:任せたい範囲を決められないうちは、成果も測りにくい。まず募集の前に決めておくことを整理する

小さな電気工事会社は、まずこの記事の内容を自社で試すところから始めても十分に前へ進めます。採用人数が増えてきた段階や1人の担当者では回らなくなった段階で、外へ任せることを考えましょう。

採用代行を比べるときは、採用代行のおすすめ比較も参考になります。採用の進め方そのものを整えたい場合は、採用コンサルティングのサービス紹介をご覧ください。

電気工事士の採用のよくある質問

Q. 電気工事士の採用は難しいですか?

A. 難しい状況です。電気工事従事者の有効求人倍率は3.23倍で職業計の1.06倍の約3倍に当たります(厚生労働省、2026年8月・常用・パートを含む)。求人の数に対して応募する人が少なく、採用の進め方を整えることが欠かせません。

Q. 電気工事士は不足していますか?

A. 不足が続いていると言える状況です。有効求人倍率は3.23倍で、2019年時点の経済産業省の推計でも第一種電気工事士は約2万人が不足する見込みとされました。ただし、7年前の推計であり、現在の人数を示すものではありません。

Q. 未経験者を採用しても戦力になりますか?

A. 育てる計画があれば戦力になります。第二種電気工事士は受験資格がなく、入社後に資格を目指せます。入社から3年間で任せる仕事と取る資格を段階で示し、教える先輩を決めておくことが育成のうえで大切です。

Q. 第一種と第二種のどちらを持つ人を探すべきですか?

A. 任せる工事で決まります。住宅や小規模な店舗が中心なら第二種で足ります。工場やビルの工事を任せたいなら第一種を探します。第一種は免状の交付に3年以上の実務経験が必要なので、経験者に限られる点も踏まえて決めましょう。

Q. 電気工事士の求人はどこに出すのがよいですか?

A. 探す相手で選びます。経験者を探すなら、人材紹介とリファラル採用が中心です。若手を迎えるなら、工業高校や職業訓練校との連携も有効です。ハローワークや求人検索エンジンは、手軽に始められる手段として組み合わせましょう。

Q. 資格手当や資格取得支援は、求人にどう書けばよいですか?

A. 金額と中身を具体的に書きます。資格ごとの手当の金額と受験費用や講習費用の負担、勉強の時間の確保を求人票にそのまま載せます。「資格手当あり」だけの書き方では、候補者の意欲につながりにくくなります。

Q. 若手が定着しないときは何を見直せばよいですか?

A. 教える人と、見習い期間の見通しを見直します。建設業の高卒の3年以内離職率は41.4%です(厚生労働省、令和4年3月卒業者)。誰が何を教えるかを決め、資格を取ったあとの任せる仕事と給与の変化を入社前に示すと不安が和らぎます。

Q. 採用代行(RPO)は小さな電気工事会社でも使えますか?

A. 採用人数や体制によっては、まだ合わない場合があります。年に5名以上を採用する会社や、複数の拠点で同時に募集する会社には向きます。年に1〜2名の採用が中心なら、まず自社で進めたほうが費用に見合いやすいでしょう。

まとめ

電気工事士の採用が難しいのは、電気工事従事者の有効求人倍率が3.23倍と高く将来も不足が見込まれるからです。そこに仕事の価値が求職者へ伝わっていない問題が重なります。まずは探す資格と任せる工事の種類を決めましょう。

そのうえで経験者は人材紹介やリファラル採用、若手は学校との連携や特化型の求人サイトで探します。未経験者を迎えるなら入社から3年間の育成計画を示し、求人票に資格手当の金額や資格取得の支援を具体的に書いてください。選考では返信の速さと現場の見学が、人が離れない決め手になります。

HeaRは累計250社以上の採用を支援してきました。年に5名以上の採用を進める電気工事会社や設備工事会社で採用の進め方から整えたい場合は、採用コンサルティングのサービス紹介をご覧ください。

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監修者

大上 諒

代表取締役CEO

HeaR株式会社 代表取締役CEO。累計250社以上の採用支援に従事し、AI-RPOなど次世代の採用ソリューションを開発・提供。「青春の大人を増やす」をミッションに掲げる。

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