Candidate Experienceが必要な理由
日本国内ではCandidate Experienceの考え方はあまり浸透しておらず、採用担当者として優先順位が低い項目です。しかし海外ではCandidate ExperienceやTalent Experienceなど類似の概念が書籍化・フォーラム化されるほどです。
なぜこれから採用CXが重要になっていくのか。
その背景を4つの観点から説明していきたいと思います。
- 「少子高齢化による有効求人倍率の上昇」
- 「終身雇用制度の崩壊」
- 「ネットの普及に伴う採用情報のオープン化」
- 「減らない採用のミスマッチ」
「少子高齢化による有効求人倍率の上昇」
日本の人口は総務省統計局の調査によれば、2008年の1億2,808万人をピークに、減少の一途をたどっています。2060年には9,000万人を下回るとも予測されています。労働人口が減少することによって、企業間の人材獲得競争も激しさを増すことでしょう。企業はこれまで以上に候補者から選ばれる必要が出てきました。
「終身雇用制度の崩壊」
トヨタ社や経団連の会見で「終身雇用は難しい」との発言がありました。終身雇用制度の崩壊により、人材の流動性が高まっています。これまで人材獲得に悩まなかった大企業ですら、入社してもらうためにさまざまな活動を行なうようになりました。自社が選ばれ続けるため、自社に転職してもらうための活動の重要度が増しています。
「ネットの普及に伴う採用情報のオープン化」
求職者はインターネット上で企業の実態を知ることができる時代になりました。口コミサイトやSNSを通して「働く」に対する価値感の変化や社員のリアルな声に触れる機会が増えました。これからは第三者からの発信だけではなく、企業自身が企業の実態を発信することが求められることでしょう。
「減らない採用のミスマッチ」
相変わらず企業と候補者のミスマッチが続いています。自社にマッチしない人をたくさん採用するよりは、自社とマッチした僅かな人材を逃さないことが大事です。ミスマッチを防ぐ観点からも自社の文化やミッションに基づいた選考体験で、候補者とのマッチ度合いを測ることが重要です。
では、採用CXを具体的に紐解いていきましょう。
Candidate Experienceの全体像(タッチポイント)
Candidate Experienceは候補者が企業を認知するところからはじまり、応募前後のやりとりや選考中、入社に至るまでの一連のプロセス体験を指します。
※オンボーディング (入社後の活躍)も含めて採用CXと定義する場合もあり
実際にHeaRで候補者とのタッチポイントを洗い出したところ、合計108個ありました。
タッチポイントを以下の5つのフェーズに分類します。(活躍フェーズは割愛しています)
0.企業準備
1.認知
2.応募
3.選考
4.内定/入社
各フェーズにおけるタッチポイントを抜粋してご紹介!
フェーズ0.企業準備
人を採用する目的は「事業を伸ばすため」です。採用活動を始める前に、自社がどのような事業を展開していて、どのようなKGI/KPIを伸ばす必要があって、それらの指標を達成するためのスキルやマインドを分解していく必要があります。
- 事業理解
- 魅力の整理(4P・コンセプト)
- 採用計画策定
- ペルソナ策定
- 採用基準の策定
- 議事録の統一・ルール化
- 面接官のロープレ
- 競合他社分析
フェーズ1.認知
認知フェーズの目標は、自社に対して好印象を抱いてもらうことです。「あの会社、なんか良いな」「楽しそうな会社」と思ってもらえるような施策を行いましょう。転職意欲の有無に関わらず、自社が望むスキルやマインドを持つ人がターゲットです。転職意欲がない頃から会社を知ってもらうことで、実際に転職活動を始める際の候補に入りやすくなるのです。
- インタビュー記事(人、組織、事業、待遇)
- 求人票
- プレスリリース
- ウェブメディアへの露出
- 社員SNS
- SEO
- Youtube
- コーポレートサイト
- 採用サイト
- 自社イベント・交流会
フェーズ2.応募
候補者は複数社の選考を受けている可能性もあります。応募からのレスポンスが遅かったり、コミュニケーションに誠意を感じないと、候補者は辞退してしまいます。誠実に対応することを意識して、候補者からの信頼を掴みましょう。
- 求人票
- スカウトメール
- リファラル
- 人材紹介
- SNSのDM
- 応募フォーム
- 採用担当者からの返信
フェーズ3.選考
入社意欲を高める重要なフェーズです。オンライン・オフラインの採用体験に一貫性を持たせることで、候補者は安心して選考に進むことができます。自社の魅力だけではなく、課題も含めてしっかりと伝えましょう。
- オフィスに入った時の社員の対応・挨拶
- オフィスの雰囲気・内装
- 採用ピッチ資料
- 面談時のアイスブレイク
- 面接官の質問
- 求職者の質問に対する回答
- クロージング
- 1日体験入社
- 選考中のコミュニケーション
- インタビュー記事(人、組織、事業、待遇)
- ウェブ面接
フェーズ4.内定/入社
内定を出した後も油断は禁物です。内定を出した企業は自社だけとは限りません。内定承諾をしてもらうため、内定後のフォローやケアは欠かせません。面談や社内イベントなどで継続的に接点を作っていきましょう。
せっかく内定を出すことが出来たにも関わらず、内定辞退ということにならないようにしっかり施策を打っていくことが大切です。
- 条件交渉
- 内定通知
- 内定フォロー
- 社内イベント参加
- 入社前研修
Candidate Experienceの改善方法
HeaRでも候補者とのタッチポイントをすべて洗い出し、改善できる箇所をひとつずつ振り返りました。しかし、100以上の項目を一気に取り組むことは難しいです。
そこで優先順位を定めました。候補者の入社意欲が高まりやすいタッチポイントから改善していくことをおすすめしています。優先順位決定のあとは、各タッチポイントでの目指すべき心理状態を書き出します。例えば、認知フェーズ×インタビュー記事(人)のタッチポイントで「HeaRは青春している人が多いな」という心理状態(読後感)を抱いてもらいたい。その場合、記事内でメンバーの青春エピソードや青春の定義を伝えることで実現する(施策&Tips)といった具合です。
今回は一部のみの掲載でしたが、こちらに求職者とのタッチポイント108項目が記載されているシートを無料で公開しています。
HeaRのCandidate Experience向上に向けた取り組み
<候補者への即レスと、それを可能にする社内連携>
候補者は連絡が遅いと感じるほど「不安になる」「信用ができなくなる」傾向があります。また「返信の遅いような会社はいい加減な会社だと思う」「当日中に連絡が来ない企業・職場では働きたくない」意見もあり、応募者にスピーディに連絡することが面接や採用を成功させるためのポイントです。HeaRでは爆速の返信を意識しており、人事だけではなく、社員全員で連絡対応できるような体制を整えています。(「爆速!」というスタンプがあるくらいです)
<採用ピッチ資料の事前送付>
HeaRでは、面接の3日前に採用ピッチ資料を送付します。候補者は会社への大まかな理解が事前に済んでいるため、改めて会社紹介をする必要がありません。面接時には「事前に送付した採用ピッチ資料についての質疑応答から始めます」と、会社の深い部分についてのディスカッションからスタートすることができます。結果、候補者のことを深く理解することができ、選考結果の精度を上げることが可能です。
<飲み物の提供>
HeaRで大事にしている価値観、「働くって、青春だ」。そこで青春の価値観に触れてもらうため、面接に来た方には必ずポカリスウェットを提供しています。その後「あなたにとっての青春ドリンクは何ですか?」と質問し、青春の価値観や思い出話をアイスブレイクも兼ねて行なっています。
<メンバー同士による面接ロープレ>
HeaRでは、メンバー同士による面接ロープレを実施し、お互いに評価し合います。話し方や立ち振る舞い、受け答えについて細かくフィードバック。また候補者からいただいた質問集を社内共有し、全員が同じ内容を回答できるよう、質の統一と向上を図っています。
<感動の1つ目のピーク、内定通知>
内定は喜ばしいことです。内定通知の部分で、より付加価値を提供したいと思いました。
そこでHeaRでは「内定通知」というタッチポイントで「ケーキを出す」や「寄せ書きを渡す」というサプライズを行っています。(この話を公開してサプライズではなくなったので、今後は要検討)全員でお祝いする、喜ぶという文化を体現できる施策のひとつかもしれません。
「この企業と出会えて良かった」と思ってもらうCandidate Experience
Candidate Experienceを実践するために、ただ自社を魅力的に見せるだけではいけません。
外見だけではなく、企業の価値観を体現できるようなプログラムや情報を偽りなくオープンに伝えていく姿勢といった内見を磨く必要があります。
候補者に選んでもらえる企業を目指し、CXを向上させましょう!
CXの具体的な事例などをまとめた資料も是非ご活用ください!