経理の採用が難しい理由と採用方法|要件の決め方・年収相場・面接の見極め・AI時代の要件【2026年10月更新】

2026-10-16
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2026-10-16

経理の採用が難しいのは、経験者が転職市場に少なく、要件を盛りすぎて応募が絞られるためです。厚生労働省の会計事務従事者の有効求人倍率は0.56倍でも、doda「企画・管理」は3.28倍でした。要件を下げる順番・面接の質問・AI時代の要件を解説します。(2026年10月更新)

経理の採用はなぜ難しいのか?

経理の採用が難しいのは、即戦力の経験者が転職市場に出にくいためです。要件の盛りすぎで対象が絞られ、年収や働き方でも他社と比べられます。法改正でやることが増えたことも、求める水準を押し上げています。

ここでは難しさの理由を5つに分けて見ていきます。理由ごとに打ち手が違うので、自社がどれに当てはまるかを先に確かめておくと後の章が読みやすくなります。

即戦力の経験者が転職市場に出にくい

経理は会社の数字を預かる仕事で、現職で信頼されている人ほど動きません。転職市場に出てくる人は限られ、出てきた人には複数社から声がかかります。

さらに「経験者」と一口に言っても中身はさまざまです。月次の締めまで自走できる人もいれば、伝票の入力と仕訳の確認だけを担ってきた人もいます。募集の時点でどの水準を求めるのかが曖昧だと、応募者との間にずれが生まれます。

要件を盛りすぎて対象が絞られる

決算を一人で完結でき税務にも強くITも使いこなせて年収は抑えたい、という条件にあてはまる人は市場にほとんどいません。MS-Japan社も、上場企業での決算経験とマネジメントとITをすべて求めると採用は決まらないと指摘しています。必須要件と歓迎要件を切り分けるよう勧める内容です。

要件を盛りすぎる背景には、前任者の退職で「あの人と同じことができる人」を探してしまう事情があります。前任者の仕事を棚卸しすると、実は入社後に覚えられる作業が多いことに気づきます。この点は後の章で扱います。

年収で大企業や他社と比べられる

dodaの職種別の平均年収では、経理は549万円でした。財務は630万円で、経理より81万円高くなっています。一方でMS-Japan社の発表では、経理・財務の求人全体の想定年収の平均は622万円でした。経験者を募集する求人に絞ると641万円です。登録者の現在の年収と求人の提示額には開きがあり、経験者を動かすには高めの提示が必要になりやすいということです。

数字の詳しい読み方は後の章で整理します。ここでは旧来の給与テーブルのまま募集すると比較の土俵にも載らないことがある点を押さえてください。

法改正で仕事が増え求める水準も上がった

電子取引データの電子保存は、2024年1月から全事業者で義務になりました。インボイス制度は2023年10月に始まっています。経理は仕訳と決算だけでなく、取引先の登録状況の確認や電子データの保存ルールの運用まで担います。

その結果、求人票に書く業務の量が増えて「経験者」の定義も広がりました。業務の範囲が広いほど、自社と同じ範囲を経験してきた人は少なくなります。

働き方の希望と自社の運用がずれている

MS-Japan社の発表では、経理・財務の求人の51.9%がリモートワークを認めています。紙の書類の処理を理由に全日出社を条件にすると、応募の段階で見送られる場合があります。出社が必要な理由が請求書の受け取りや押印だけなら、電子化で解消できるかもしれません。

出社が必要な業務とそうでない業務を分けて書けば、働き方で選ばれにくい状況は改善できます。

求人倍率が1を切るのに経理の採用が難しいのはなぜか?

厚生労働省の統計では会計事務従事者の有効求人倍率は0.56倍と1を下回りますが、dodaの転職求人倍率では経理を含む「企画・管理」が3.28倍です。前者は未経験者を含む求職者全体で、後者は転職希望者です。見ている母集団が違います。

求人倍率の記事は数字がばらばらで混乱しやすいため、2つの原典を並べて読み方を整理します。

厚生労働省:会計事務従事者は求人より求職者が多い

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」の参考統計表を見ると常用(パートを含む)の会計事務従事者は有効求人が17,745件・有効求職が31,928人で、有効求人倍率は0.56倍でした。求職者が求人の約1.8倍いる計算です。パートを除いた常用でも0.52倍で、職業全体の1.05倍(パート含む)を下回っています。

ただしこの統計はハローワークに登録した求職者を職業別に数えたものです。経理の経験がない求職者も含まれ、企業が欲しい経験者だけを数えた数字ではありません。倍率が1を切っているからといって、経験者が余っているとは言えません。この読み方は公式の説明ではなく、HeaRの解釈です。

doda:企画・管理は3.28倍で毎月上がっている

dodaの転職求人倍率レポート(2026年8月分、2026年9月17日発表)では、全体が2.86倍でした。職種別では経理や財務を含む「企画・管理」が3.28倍です。事務・アシスタントは0.65倍で、同じ管理部門でも大きく違います。

「企画・管理」の倍率は2026年4月の2.82倍から、5月2.93倍・6月3.05倍・7月3.14倍と毎月上がっています。dodaの区分に「経理」だけの倍率はありません。dodaの平均年収の区分では経理が「企画/管理系職種」の小分類にあたるため、経理を含む区分の数字として読んでください。

2つの数字を並べて読む

見る数字 母数 読み取れること
厚生労働省(会計事務従事者)0.56倍 ハローワークの求職者全体。未経験者も含む。 経理の仕事を探す人は、求人より多い。
doda(企画・管理)3.28倍 dodaに登録した転職希望者。職種は直近の仕事。 転職市場にいる現職の管理部門の人は、求人より少ない。

2つを合わせると、仕事を探している人は多くても経験があって転職市場に出ている人は求人に対して少ない構図が見えてきます。dodaの倍率は転職希望者の直近の職種で数える点にも注意が必要です。経理から別の職種に移りたい人は「経理」ではなく別の希望として扱われることがあり、経理の経験者の数をそのまま表すわけではありません。

経理の年収相場はいくらか?

dodaの職種別の平均年収は経理が549万円で、20代417万円・30代532万円・40代619万円・50代以上717万円です。求人の提示額はこれより高めで、MS-Japan社の発表では経理・財務の求人の想定年収の平均が622万円でした。

年収は2種類の数字を混ぜずに読む必要があります。ここでは「人の現在の年収」と「求人が出している額」を分けて示します。

dodaの平均年収:登録者の現在の年収

dodaの「平均年収ランキング」は、2024年9月から2025年8月の1年間にdodaに登録した約60万人の年収データを職種別に集計したものです。管理部門の主な職種を並べると次のとおりです。

職種 平均年収 男性 女性
経理 549万円 628万円 456万円
財務 630万円 690万円 508万円
人事 549万円 633万円 488万円
総務・庶務 534万円 606万円 443万円

経理の年代別は20代417万円・30代532万円・40代619万円・50代以上717万円です。30代前半で月次の締めまで自走できる経験者に来てもらうなら、30代の平均532万円は下限の目安にすぎません。

求人の提示額:MS-Japan社の発表

管理部門と士業の採用に特化したMS-Japan社の発表では、経理・財務の求人全体の想定年収の平均は622万円でした。経験者を募集する求人に絞ると641万円です。30代の中間管理職の中央値は、中小の未上場企業が643万円・大規模な上場企業が777万円です。募集時の最低年収は前年に比べて首都圏で150.0%・近畿圏で155.3%に上がったとされています。

この数字はMS-Japan社の自社のデータで、集計の母数や条件は公表されていません。市場全体の平均とは言い切れないため、「経験者を動かす水準の目安」として使ってください。自社の提示額は、求人サイトで同じ職位の求人を数件見比べて確かめます。

提示額を決める手順

提示額は、次の順番で決めると根拠を説明しやすくなります。

  1. 募集する枠(経験者枠か育成枠か)と、任せる範囲を決める
  2. 同じ範囲を任せる求人を、求人サイトで5件ほど見比べて幅をつかむ
  3. dodaの年代別の平均(20代417万円・30代532万円・40代619万円)を、入社後の年収の目安として確かめる
  4. 社内の同じ役割の人との差が大きすぎないかを確かめる
  5. 上限と下限の幅を決め、経験によってどこに置くかの基準を面接官と共有する

最後の共有を省くと、面接官ごとに言う金額が変わり、内定後の辞退や不信につながります。

提示額を上げられないときに見直す点

年収を上げられない会社は、経験者に絞らない方法に切り替えます。たとえば経験者枠と育成枠を分け、育成枠は月次の補助から始めて半年ごとに任せる範囲を広げる設計にします。経験者枠は年収で競わず、任せる範囲の広さやリモートの可否・残業の少なさで選ばれる理由を作ります。

年収以外で選ばれる理由の作り方は、採用ブランディングで整理しています。

募集の前に経理の要件をどう決めるか?

経理の要件は前任者の仕事を棚卸しして「入社初日から必要なこと」と「入社後に覚えられること」に分けて決めます。決算の範囲・会計ソフト・資格・マネジメントの有無を必須と歓迎と育成に振り分けると、応募対象が絞られすぎません。

採用基準の作り方の一般論は採用基準の作り方とペルソナ設計で扱っています。ここでは経理の要件に絞って、具体的な分け方を示します。

前任者の仕事を3つに分ける

要件を決める前に、現在の経理の業務を洗い出します。洗い出した業務を次の3つに分けます。

  • 毎日・毎週あるもの:仕訳の入力・経費精算の確認・請求書の処理・支払の準備など
  • 月に1度あるもの:月次の締め・売掛金と買掛金の確認・給与の仕訳・予実の資料づくりなど
  • 年に1度あるもの:年次の決算・税務申告の準備・監査や税理士への対応など

3つのうち、入社した人にいつ任せるかを決めます。年に1度の仕事は、入社から決算期まで数ヶ月あれば現任者や税理士と一緒に覚えられます。採用の時点では毎日と毎月の仕事を自走できることだけを求めれば、対象はぐっと広がります。

経理の要件の振り分け表

下の表は経理の主な要件を必須・歓迎・育成に分けた例です。会社の状況に応じて、振り分けを入れ替えてください。

要件 必須にしてよい場合 歓迎にする場合 入社後に育てる場合
日商簿記の資格 経験のない人も候補にして、基礎知識の目安にしたいとき。 経験者を募集していて、実務経験で判断できるとき。 資格がなくても、入社後の学習支援で取得を目指すとき。
月次決算の経験 経理が1〜2人で、入社後すぐに月次を任せたいとき。 任せる時期が半年後で、補助から始められるとき。 経験がなくても、現任者が教える体制があるとき。
年次決算の経験 決算を一人で完結させる体制のとき。 税理士や監査法人に任せる範囲が大きいとき。 決算期まで数ヶ月あり、現任者と一緒に進められるとき。
税務申告の知識 税理士に頼らず自社で申告まで進めるとき。 税理士が申告し、自社は資料づくりまでのとき。 入社後に税理士から学べるとき。
特定の会計ソフトの経験 移行コストをかけられず、すぐに使いたいとき。 同種のソフトの経験で足りるとき。 ほとんどの場合、入社後に数週間で慣れる。
同じ業種の経験 特殊な会計処理があり、他業種の経験が通用しないとき。 取引の流れを早く理解してほしいとき。 一般的な業種のとき。
マネジメントの経験 入社後すぐに部下を持つとき。 将来的に管理者を任せたいとき。 現時点で部下がいないとき。

要件を下げるならどの順番で下げるか?

要件は入社後に短期間で補えるものから下げます。特定の会計ソフトの経験・同じ業種の経験・上場企業での経験の順で外し、日商簿記の資格や年次決算の経験は最後に検討します。正確さや責任感を裏づける、月次の締めを経験しているかどうかは最後まで残します。

下げる順番を決めずに「応募が来ないから全部下げる」と動くと、入社後に補えない部分で苦労します。ここでは補えるかどうかの基準で順番を示します。順番はHeaRの考え方で、会社の状況で入れ替わります。

下げる順番の表

順番 下げる要件 下げてよい理由 下げたときの手当て
1 特定の会計ソフトの経験 会計ソフトの基本は共通で、数週間で慣れる人が多い。 入社後に操作の研修を行う。
2 同じ業種の経験 取引の流れは数ヶ月で理解できる。 業界特有の処理を、現任者が最初の3ヶ月で教える。
3 上場企業・連結決算の経験 中小企業の経理には必要ない場合が多い。 開示や連結が不要な範囲を求人票に書く。
4 日商簿記2級などの資格 資格がなくても実務で身につけた人がいる。 簿記の学習支援を用意し、取得を歓迎に変える。
5 年次決算の経験年数 決算期までに時間があれば、現任者と一緒に覚えられる。 税理士や現任者と進める体制を決める。
6 経験者の条件そのもの(育成枠への切り替え) 20代の未経験を育てる方法に変える。 教える人・計画・確認の仕組みを先に用意する。

簿記2級の合格率は日本商工会議所の統一試験で第173回(2026年6月)が15.1%・第172回(2026年2月)が15.1%・第171回(2025年11月)が23.6%でした。取得が難しい資格ですが、持っていない人の中にも実務で十分な力を持つ人はいます。資格を必須にするかどうかは、資格で何を判断したいのかで決めます。基礎知識の目安なら歓迎で足りますし、経験のない人を候補にするなら必須にして構いません。

最後まで下げないもの

下げずに残したい項目は2つあります。月次の締めを経験しているかと、数字のずれを放置せず原因を調べたことがあるかです。この2つは入社後に教えるのが難しい正確さと責任感の裏づけになります。経理は会社のお金を預かる仕事なので、責任感や倫理観を教育で補うことは期待できません。

未経験・育成枠に切り替えるときの条件

未経験を採用するときは、教える人・計画・確認の仕組みの3つを先に決めます。誰が毎日の質問に答えるのか・最初の3ヶ月は何を任せるのか・仕訳のミスを誰がいつ確認するのか、の3つです。体制がないままの未経験採用は、本人にも現任者にも負担がかかります。

経理の採用手法にはどんなものがあるか?

経理の採用手法は人材紹介・求人媒体・ダイレクトリクルーティング・リファラル・ハローワーク・採用代行の6つに分けられます。経験者を急いで探すなら人材紹介とスカウト、育成枠を広く募るなら求人媒体とハローワークが向いています。

手法ごとに向いている場面と注意点が違います。自社の要件と急ぐ度合いに合わせて組み合わせてください。

6つの手法の比較表

手法 向いている場面 注意すること 社内の手間
人材紹介(管理部門に強い会社) 経験者を急いで探すとき。 紹介料がかかる。要件と見送りの理由を共有しないと精度が上がらない。 要件の共有と面接の調整。
求人媒体 経験者と育成枠の両方を広く募りたいとき。 掲載のみだと応募は待ちになる。求人票の書き方で結果が変わる。 求人票の作成と応募者の対応。
ダイレクトリクルーティング 現職で働く潜在層に声をかけたいとき。 返信が少ない。経理に響く文面を作る必要がある。 候補者探し・文面作成・日程調整。
リファラル(社員の紹介) 社風に合う人を探したいとき。 経理が少人数の会社では紹介の候補が限られる。 社員への依頼とお礼の設計。
ハローワーク 費用を抑えて、育成枠を募りたいとき。 経験者は出てきにくい。 求人票の作成と応募者の対応。
採用代行(RPO) 候補者探しやスカウトの運用を任せたいとき。 要件が固まっていない段階では効果が出にくい。 要件の共有と最終判断。

求人媒体とスカウトの使い分けはエンジニアのスカウトの考え方が参考になります。職種は違いますが候補者に届く文面の作り方は共通しています。採用手法の費用感は採用コストで整理しています。

経験者枠と育成枠で手法を分ける

経験者枠と育成枠を同じ求人票で募集すると、どちらの応募者にも合わない文面になりがちです。経験者枠は人材紹介とスカウトを中心にし、任せる範囲と働き方を前面に出します。育成枠は求人媒体とハローワークを中心にし、教える体制と最初の3ヶ月の計画を前面に出します。

求人票を2つに分けるだけでも、応募者の期待と入社後の仕事のずれは減ります。経験者枠の応募が集まらないときは、育成枠で先に1人を迎えて月次の補助を任せ、そのうえで経験者を探す順番も選べます。現任者の負担が減れば、経験者の面接や引き継ぎにも時間を割けます。

経理のスカウトでは「何を任せるか」を書く

経理の候補者は現職で信頼され、複数の会社から声をかけられています。定型文のスカウトは読まれません。書くのは次の3点です。

  • なぜあなたに声をかけたのか(経歴のどこに注目したか)
  • 入社後に任せる範囲(月次の締めまで任せる・決算の体制づくりを一緒に進める、など)
  • 働き方(リモートの可否・残業の実態・繁忙期の見通し)

「成長できる環境です」「裁量があります」のような一般的な表現だけの文面は避けてください。任せる範囲を具体的に書くほうが、候補者は自分の仕事を想像できます。

経理の求人票とスカウトには何を書くか?

求人票には任せる業務を毎日・毎月・毎年に分けて書きます。必須と歓迎も分け、働き方の事実をそのまま書きます。年収は経験に応じた範囲を示し、業務の範囲が分かると応募者は自分に合うかを判断できます。

求人票は候補者との最初の接点で、書き方次第で応募数と質が変わります。ここでは最低限書くべき項目を整理します。

求人票に書く項目

  • 業務の内容:毎日・毎月・毎年の仕事に分けて書く。決算を誰が担うのか、税理士や監査法人との役割分担も添える
  • 必須と歓迎:前の章の振り分け表のとおり分ける。必須は3つ以内を目安にする
  • 体制:経理の人数・上司の経歴・教える人がいるか
  • 働き方:リモートの可否・出社が必要な業務・残業時間の実態・繁忙期の時期
  • 年収:経験に応じた範囲で示す。記載の根拠(経験年数や任せる範囲)も書く
  • ツール:使っている会計ソフトと、請求書や経費精算のシステム

書かないほうがよい表現

「アットホームな職場」「やる気のある方歓迎」など、どの会社でも書ける表現は避けます。経理の候補者が知りたいのは、任される範囲・締めの時期の忙しさ・上司や同僚の人数といった事実です。見せにくい事実があるなら、応募者に伝わる前に自社の運用を見直す機会になります。

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面接では経理の何を見極めるか?

面接では決算や月次をどこまで自分で進めたかを具体的な場面で確かめます。ITを使った改善の経験と数字に向き合う姿勢も見ます。「大手で経験あり」という申告は担当範囲が細分化されていた場合があるため、実際の担当範囲を掘り下げます。

経理は専門性が高く、面接の会話だけでは力が分かりにくい職種です。質問を事前に決めておくと、面接官が変わっても同じ基準で見られます。面接全体の設計は面接官のスキルで整理しています。

見極める4つの観点と質問例

観点 見たいこと 質問例
担当した範囲 月次・年次のどこまでを自分で進めたか。 「前職の月次決算は、どの作業を誰が担当していましたか。あなたが担当した範囲を順に教えてください。」
難しかった場面の対処 数字のずれや問題に、どう向き合ったか。 「これまでで最も複雑だった年次決算の場面を教えてください。苦労した点と、どう解決したかも聞かせてください。」(MS-Japan社の記事にある質問例を参考にしました)
改善の経験 仕組みを変えて仕事を減らしたことがあるか。 「作業の時間を減らした経験があれば、何を変えて、何時間が何時間になったかを教えてください。」
責任感と正確さ ミスをしたときの行動。 「数字の誤りに後から気づいたとき、まず何をしましたか。誰にいつ伝えましたか。」

「大手で経験あり」を鵜呑みにしない

MS-Japan社の記事も、大企業では業務が細分化されて全体の一部しか経験していない場合があると注意しています。「上場企業の経理でした」と聞いたら、担当した工程を「入力」「確認」「締め」「開示」のどこかに分けて聞き直します。決算を締めた経験の有無が、自社の求める水準と合うかを決めます。

短い実技で確かめる

質問だけで判断しにくいときは、簡単な課題を用意する方法があります。たとえば架空の仕訳を5〜10件見せて誤りを探してもらい、気づいた点とその理由を話してもらいます。ここで見るのは正解の数ではなく、気づいた理由と不明な点を質問できるかどうかです。課題の設計はワークサンプルテストの考え方が使えます。

辞退を防ぐために

経験者は複数社を並行して受けています。選考の速さは辞退を左右します。結果の連絡を遅らせない・カジュアル面談で現場の上司と話す機会をつくる、の2点は最低限そろえてください。カジュアル面談と内定承諾率の記事で、進め方を整理しています。

経理のAI化で求める要件はどう変わるか?

経理にAIを使う会社は増えていますが、運用する人材は不足しています。TOKIUM社の2026年の調査では、AI活用が重要と答えた経理担当者は65.4%でした。一方で課題は専門人材の不足が49.5%・操作スキルの不足が42.5%で、AIを使いこなす人の採用が新しい課題になっています。

ここでは調査で確かめられる範囲と、HeaRが採用の現場で考える設計を分けて書きます。後者は調査結果ではなく、HeaRの考え方です。

調査で分かっていること

TOKIUM社が2026年5月27日に発表した調査(2026年4月17日〜24日・経理・財務担当の従業員946人)では、次の結果でした。

  • AI活用が重要と答えた経理担当者は65.4%(前年に比べて15.6ポイント増)
  • 現在AIを活用している企業は27.8%(前年は18.9%)
  • 導入を検討中は24.4%
  • 課題(複数回答)は、運用管理やデータ分析を担う専門人材・ノウハウ不足が49.5%・操作スキルや知識の不足が42.5%・導入後の継続支援の不足が31.5%

SAP Concur社の「経理白書2026」(従業員500人以上の企業の経理管理職400人・2025年12月)では、AIを導入済みの企業が38.0%でした。導入済みの企業のうち、毎日使う割合は28.3%・毎週使う割合は25.7%です。対象は大企業に限られるため、中小企業の状況とは分けて読む必要があります。

2つの調査からは、AIを導入した会社でも使いこなす人が足りない様子が読み取れます。AIで経理の仕事がなくなったとは言えません。仕事の中身が入力から確認と判断に移りつつあります。

経理の要件の置き直し(HeaRの考え方)

調査から言えることは限られますが、AIを使う会社が増えれば経理に求める力の置き方は変わると考えられます。次の表はHeaRが採用の設計で提案する置き直しの例です。調査で確かめた結果ではない点にご注意ください。

要件 これまで これから
仕訳の入力の速さ 重視されてきた。 AIや自動入力で省ける部分が増えるため、必須にしなくてよい場合が多い。
仕訳や数字の正しさを判断する力 経験年数で見ていた。 AIが作った結果を確認する力として、より重視する。
会計ソフトやクラウドの使用経験 特定ソフトの経験を求めた。 新しい仕組みを試して業務を変えた経験を見る。
他部署に説明する力 歓迎にとどまった。 数字の背景を事業部に伝える仕事が増えるため、重視する。
数字の異常に気づく感覚 暗黙の要件だった。 面接で具体的な場面を聞いて確かめる。

面接で聞くAIの使い方

AIの経験を必須にする必要はありません。確かめたいのは新しいやり方を試して仕事を変えようとする姿勢です。たとえば「業務を効率化するために自分で始めた工夫があれば教えてください」と聞きます。AIでなくてもExcelの改善で構いません。AIを使った経験があれば、どの作業に使い出力をどう確認していたかを聞きます。

候補者探しや日程調整など、採用の側でAIを使う方法はAI採用で整理しています。

経理の採用を外注やAI・採用代行で補うのはどんなときか?

経理の採用が決まらないときは、経理業務そのものを外注する方法と採用の活動を支援してもらう方法があります。前者は経理が不足している期間をつなぐ手段で、後者は採用で人を迎えるための手段です。目的が違うため、混ぜて検討しないようにします。

多くの上位記事は経理業務の外注(アウトソース)を勧めています。ただし外注は採用の代わりにはなりません。社内に経理の知識を残したい場合は採用が必要です。

経理業務の外注と採用の支援の違い

選択肢 何を任せるか 向いている場面 注意すること
経理業務の外注 仕訳・月次・請求書処理など。 採用までの数ヶ月をつなぎたいとき。 社内にノウハウが残らない。
採用代行(RPO) 候補者探し・スカウト・日程調整。 採用に手が回らないとき。 要件を先に決める必要がある。
採用コンサルティング 要件・求人票・選考の設計。 何を求めればよいか決まらないとき。 実行は自社で進める。

状況別の使い分け

  • 要件が固まっていない:経理の要件の振り分けから整理します。採用コンサルティングで、業務の棚卸しと必須・歓迎の整理から進めます
  • スカウトを送れていない・面接の調整が追いつかない:候補者探しと文面の運用を、AI-RPOに任せます。判断が必要な場面だけ社内で対応します
  • 採用までの期間をつなぎたい:経理業務の外注を併用しつつ、採用は並行して進めます

費用の目安は採用代行の費用相場で整理しています。HeaRは累計250社以上の採用を支援しており、職種ごとの要件の設計から相談を受けています。

経理採用のよくある質問

Q. 経理の採用はなぜ難しいのですか?

A. 経験者が転職市場に出にくく、要件を盛りすぎて対象が絞られ、年収や働き方で他社と比べられるためです。電子取引データの保存義務化やインボイス制度で仕事が増え、求める水準も上がりました。理由に合わせて、要件・年収・働き方のどこから直すかを決めます。

Q. 経理の有効求人倍率はどのくらいですか?

A. 厚生労働省の統計(令和8年7月)では、会計事務従事者の有効求人倍率は0.56倍です。dodaの転職求人倍率(2026年8月)では、経理を含む「企画・管理」が3.28倍でした。母数が違うため、数字は並べて読みます。

Q. 経理の年収相場はいくらですか?

A. dodaの平均年収は経理が549万円で、30代は532万円・40代は619万円です。求人の提示額は高めで、MS-Japan社の発表では経理・財務の想定年収の平均が622万円でした。経験者を募集するなら、600万円台を目安に比較してください。

Q. 経理は未経験でも採用できますか?

A. 採用できますが、教える人・計画・確認の仕組みを先に用意する必要があります。まず月次の補助や経費精算の確認から任せ、半年ごとに範囲を広げる設計が現実的です。体制がないまま採用すると、本人と現任者の双方に負担がかかります。

Q. 簿記は何級を必須にすべきですか?

A. 必須にするかは、資格で何を判断したいのかで決めます。経験のない人を候補にするなら簿記2級を基礎知識の目安にできます。経験者を募集するなら、実務経験で判断できるため歓迎で十分です。統一試験の簿記2級の合格率は15.1%(第173回)でした。

Q. 経理の面接では何を聞けばよいですか?

A. 担当した範囲・難しかった場面の対処・改善の経験・ミスをしたときの行動の4点を、具体的な場面で聞きます。「月次決算のどの作業を誰が担当したか」と聞くと、大手で細分化された仕事の経験者かどうかも分かります。

Q. 経理の募集はどの媒体が向いていますか?

A. 経験者を急ぐなら管理部門に強い人材紹介とスカウト、育成枠を広く募るなら求人媒体とハローワークが向いています。1つに絞らず、経験者枠と育成枠で手法を分けると母集団が広がります。

Q. 経理の仕事はAIでなくなりますか?

A. なくなるとは言い切れません。TOKIUM社の調査では、AI活用が重要と答えた経理担当者が65.4%に増えた一方、課題は専門人材の不足(49.5%)と操作スキルの不足(42.5%)でした。入力が減り、確認と判断を担う人の価値が高まる方向です。

まとめ

経理の採用が難しいのは、経験者が転職市場に出にくいうえに要件を盛りすぎやすく、年収や働き方でも比べられるためです。厚生労働省の会計事務従事者の有効求人倍率は0.56倍でもdodaの「企画・管理」は3.28倍で、探している人は多くても経験者は少ない構図でした。

進め方は5つです。前任者の仕事を毎日・毎月・毎年に分けて要件を決め、会計ソフトや同業種の経験から順に下げます。面接では担当した範囲を具体的な場面で聞き、年収は登録者の平均と求人の提示額を分けて読みます。AI時代の要件は確認と判断の力に置き直します。

経理の要件と採用設計の相談は採用コンサルティングで受けています。候補者探しやスカウトの運用を任せたい場合はAI-RPOをご覧ください。職種別の採用記事としてマーケティング職の採用・営業職の採用も参考にしてください。

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監修者

大上 諒

代表取締役CEO

HeaR株式会社 代表取締役CEO。累計250社以上の採用支援に従事し、AI-RPOなど次世代の採用ソリューションを開発・提供。「青春の大人を増やす」をミッションに掲げる。

編集者

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