法務の採用が難しい理由と採用方法|1人目法務の要件の決め方・採用手法の比較・面接の見極め・AI時代の要件【2026年10月更新】

2026-10-23
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2026-10-23

法務の採用が難しいのは、経験者が現職から動きにくく、要件を増やしすぎて対象が絞られるためです。人材が不足している企業は77.3%(KPMG調査)、法務の平均年収は710万円(doda)でした。会社の段階別の要件の決め方・必須条件を緩める順番・採用手法6つの比較・面接の見極めを解説します。(2026年10月更新)

法務の採用はなぜ難しいのか?

法務の採用が難しいのは、経験者が現職から動きにくいうえに要件を増やしすぎること・業務内容が社外に伝わりにくいこと・年収で法律事務所や金融と競合すること・1人目の法務は社内に評価できる人がいないことが重なるためです。理由は5つに分けられ、それぞれ打ち手が異なります。

この5つは、HeaRが採用支援で見てきた法務の採用がうまくいかない場面を分けたものです。公的な統計で証明された分類ではありません。

経験者が少なく現職から動きにくい

法務は契約・紛争・コンプライアンスなど、会社の重要な判断に関わる仕事です。現職で信頼されている人ほど動かず、転職市場に出てくる人は限られます。出てきた人には複数の会社から声がかかります。

「法務の経験者」と言っても中身はさまざまです。契約審査を中心にしてきた人もいれば、株主総会の運営やガバナンスを担ってきた人もいます。M&Aの案件を経験した人もいます。募集の時点でどの経験を求めるのかが曖昧だと、応募者との間にミスマッチが生まれます。

要件を増やしすぎて対象が絞られる

上場企業での経験・弁護士資格・英文契約の対応・M&Aの経験・知的財産の知識を、すべて求める募集はよく見かけます。この条件に全部あてはまる人は市場にほとんどいません。

背景には前任者の退職で「あの人と同じことができる人」を探してしまう事情と、1人目の法務にすべてを任せたい気持ちがあります。必須の条件が増えるほど、応募できる人は減っていきます。

法務の業務内容が社外に伝わりにくい

候補者は求人票から、その会社の法務がどこまで任されているかを読み取ります。仕事の範囲や決裁権限が書かれていないと、契約書のひな形を直すだけの仕事なのか事業の意思決定に関われる仕事なのかが分かりません。

法務は「リスクを指摘して止める部署」と見られがちです。事業を前に進める判断を任せたいなら、募集の段階でそれを伝えなければ会社の魅力は届きません。

年収で法律事務所・金融・コンサルティングと競合する

法務の経験者は事業会社の法務だけでなく法律事務所・金融機関・コンサルティング会社などにも転職先の候補を持っています。年収の水準は後の章で示すとおり、経験で大きく幅があります。

給与テーブルを変えずに募集すると、比較の土俵にも載らない場合があります。年収で勝てないときは、任せる範囲の広さや決裁権限といった別の理由を用意する必要があります。

1人目の法務は社内に評価できる人がいない

法務が一人もいない会社では、面接官に契約の専門家がいません。候補者の実力を判断できず、資格や社名といった見た目で決めてしまうか判断を先送りして他社に決められてしまいます。

入社後も同じです。評価する上司や基準がなければ、候補者は「入社しても何をもって評価されるのか分からない」と不安になります。この不安は面接で評価の基準を伝えることで減らせます。

5つの理由と対応する章

理由 起きること 対応する章
経験者が少なく現職から動きにくい 応募が集まらず、スカウトの返信も少ない。 採用手法の比較・求人票とスカウトの章
要件の増やしすぎ 条件にあてはまる人が市場におらず、募集が長引く。 要件の決め方・必須条件を緩める順番の章
業務内容が社外に伝わりにくい 任される範囲が伝わらず、応募や承諾につながらない。 求人票とスカウトの章
年収での競合 他社の提示額に負けて辞退される。 年収相場の章
1人目は評価できる人がいない 実力を判断できず、入社後の不安も残る。 面接の章

法務人材はどれくらい不足しているのか?

KPMGコンサルティング社とトムソン・ロイター社の2024年の調査では、法務・コンプライアンス部門の人材が不足している企業が77.3%でした。dodaで法務を含む「企画・管理」の求人倍率は3.31倍ですが、法務だけの倍率は公表されていません。

人材が足りないという数字は複数あります。ただし調査の対象や母数が違うため、並べて読む必要があります。

KPMGとトムソン・ロイターの調査

2024年3月29日に発表された「法務・コンプライアンスリスクサーベイ2024」では、回答企業の77.3%が法務・コンプライアンス部門の人材が不足していると答えました。前回の調査から0.4ポイント増えています。課題として「法務人材の採用・育成」を挙げた企業は54.7%でした。

この調査の対象は国内の上場企業と売上高400億円以上の未上場企業です。中小企業やスタートアップの状況は含まれていません。発表から時間も経っているため、不足している割合がいまも同じとは言い切れません。それでも大手でさえ採用と育成に苦労している点は読み取れます。

dodaの転職求人倍率

dodaの転職求人倍率レポート(2026年9月、2026年10月22日発表)では、全体が2.89倍でした。職種別で法務を含む「企画・管理」は3.31倍で、4月から毎月上がっています。

月(2026年) 企画・管理の転職求人倍率
4月 2.82倍
5月 2.93倍
6月 3.05倍
7月 3.14倍
8月 3.28倍
9月 3.31倍

dodaの職種別の表に「法務」の列はなく、法務だけの倍率は公表されていません。dodaの平均年収の区分では、法務は企画/管理系に入っています。そのため「企画・管理」の数字には法務が含まれると考えられますが、経理や人事・総務なども同じ区分です。法務の需給をそのまま表す数字ではありません。

求人倍率だけで法務の難しさは決まるのか?

求人倍率は、転職を希望する登録者1人に対して何件の求人があるかを示す数字です。倍率が高ければ、探している人に対して求人が多いと言えます。しかし法務の難しさは倍率の高さだけでは決まりません。

法務の場合は契約審査・ガバナンス・M&Aなど経験の中身が分かれています。求人倍率が低く候補者の数が足りているように見えても、自社が求める経験を持つ人が少なければ採用は決まりません。倍率の数字よりも求める経験の中身を絞れているかを先に見直してください。

法務の年収相場はいくらか?

dodaの職種別平均年収で、法務は710万円でした。20代465万円・30代650万円・40代795万円・50代以上967万円と、経験年数と任されてきた業務の範囲によって年収の幅が大きい職種です。この数字は登録者の現在の年収で、求人の提示額ではありません。

公表されている年収の数字と、公表されていない提示額の相場を分けて書きます。提示額の決め方は、1人目法務・上場準備・大手の法務部の3つの段階に分けて示します。

dodaの平均年収:登録者の現在の年収

dodaの「平均年収ランキング」は、2024年9月から2025年8月に登録した20〜65歳の正社員の回答(約60万件)を職種別に集計したものです。法務は企画/管理系の22職種中4位でした。

区分 法務の平均年収
全体 710万円
男性 777万円
女性 608万円
20代 465万円
30代 650万円
40代 795万円
50代以上 967万円

隣接する職種も参考になります。専門職の「弁護士」は835万円、企画/管理系の「知的財産/特許」は723万円でした。弁護士資格を持つ人を狙う場合は、法務の平均より高い水準を見込む必要があります。

求人の提示額は公表データを確認できなかった

上の数字は転職サービスに登録した人がいま受け取っている年収です。求人が出している提示額とは別の数字になります。職種別に求人の提示額をまとめた公表データは、2026年10月時点で確認できていません。

経験者に転職を決めてもらうには、現在の年収より高い提示額が必要になる場面が多くあります。これはHeaRの採用支援で見てきた傾向で、数字で裏づけたものではありません。自社の提示額は求人サイトで同じ役割の求人を数件見比べて確かめてください。

提示額を決める3つの区分

年収は経験年数と任せる範囲で幅が大きいため、1つの相場に合わせるより任せる範囲から決めるほうが説明しやすくなります。次の表はHeaRの考え方で、金額の目安ではなく決め方の軸です。

区分 任せる範囲 提示額の決め方
1人目の法務 契約審査・事業部からの相談・規程の整備を1人で担う。 事業責任者に近い役割として、dodaの30代650万円と40代795万円を比較の起点にする。
上場準備 ガバナンス・取締役会の運営・内部統制の法務面を担う。 経験者が少ないため、40代795万円を起点にして社内の役員との差を確かめる。
大手の法務部 専門分野(契約・M&A・知的財産など)を分担して担う。 社内の等級に合わせる。専門分野の経験年数を等級に置き換える基準を決める。

決めた幅は面接官の全員で共有します。面接官ごとに言う金額が違うと、内定後の辞退や不信につながります。年収を上げられない場合は、決裁権限の広さ・リモートの可否・顧問弁護士との分担の明確さなど年収以外で選ばれる理由を用意します。理由の作り方は採用ブランディングの考え方が使えます。

募集の前に法務の要件をどう決めるか?

法務の要件は会社の段階ごとに「入社初日から必要なこと」を決めます。契約審査が中心かガバナンスとM&Aまで含むか・弁護士資格を必須にするか・スペシャリスト型かゼネラリスト型かの3点を、先に決めてください。

採用基準の一般的な作り方は採用基準の決め方と採用ペルソナの作り方で扱っています。ここでは法務に絞って、具体的な分け方を示します。

最初に決める3つの問い

1つ目は仕事の中心を何にするかです。中心が契約審査と事業部からの相談なら、実務の経験者で足ります。株主総会や取締役会などのガバナンスまで担うなら、その運営の経験が要ります。M&Aや訴訟まで含むなら、案件の経験者が必要です。

2つ目は弁護士資格を必須にするか、3つ目はスペシャリスト型かゼネラリスト型かです。大手では分野ごとに担当が分かれるため専門性の深さが求められ、中小では契約から労務・規程までを一人で見る幅が求められやすくなります。ただしこれは一般的な傾向で、会社の規模だけでは決まりません。

会社の段階別の要件の表

会社の段階 主な仕事 弁護士資格 求める型 注意すること
1人目の法務 契約審査・事業部の相談・規程の整備・顧問弁護士との窓口。 必須にしないことが多い。 ゼネラリスト型。幅広く自走できる人。 評価できる人が社内にいないため、面接の設計が必要。
2人目以降 1人目の業務の分担。専門分野(契約・知的財産・労務など)を持つ。 1人目が弁護士でないなら、歓迎にする場合がある。 1人目と補い合う型。 1人目と同じ経験の人を迎えると、できることが増えない。
上場準備 ガバナンス・取締役会の運営・内部統制の法務面・開示の対応。 必須にはせず、上場準備の経験を見る。 スペシャリスト型。上場の経験者。 経験者が少なく、競合が多い。
大手の法務部 分野ごとの専門業務。海外の案件を含むことがある。 分野によって必須にする。 スペシャリスト型。 社内の等級と提示額の整合を確かめる。

弁護士資格を必須にするかを決める

資格を必須にするかは、資格で何を判断したいのかで決めます。契約の審査・事業部への相談対応・規程の整備は、資格がなくても担える仕事です。資格があることで、法律の知識の水準や勉強量を判断しやすくなる面はあります。

一方で必須にすると対象が大きく絞られ、年収の水準も上がります。社内で扱う仕事の大半が契約審査と相談対応なら資格は歓迎にとどめ、契約書を読んで論点を言葉にできるかを面接で確かめるほうが現実的です。この判断の基準はHeaRの考え方で、会社の状況で入れ替わります。

必須条件を緩めるならどの順番で緩めるか?

要件は入社後に補いやすいものから下げます。弁護士資格・上場企業での経験・同じ業界の経験・経験年数の順で検討し、契約書を読んで論点を言葉にできる力と事業部に説明する力は最後まで残します。

応募が来ないからといって全部を緩めると、入社後に補えない部分で苦労します。ここでは補えるかどうかを基準にして順番を示します。順番はHeaRの考え方で、会社の状況で入れ替わります。

必須条件を緩める順番の表

順番 緩める要件 緩めてよい理由 緩めたときの手当て
1 弁護士資格 契約審査・相談対応・規程の整備は資格がなくても担える。 難しい判断は顧問弁護士に相談する流れを決める。
2 上場企業での経験 上場準備や開示を担わない会社には必要ない場合が多い。 上場や開示の業務は求人票から外すか、外部の専門家に任せる。
3 同じ業界の経験 業界特有のルールは数ヶ月で身につく人が多い。 業界の法令や取引の流れを、最初の3ヶ月で教える計画を立てる。
4 経験年数 年数より、どの業務を自分で進めたかのほうが実力に近い。 年数を外し、契約書1本のレビュー課題で力を確かめる。
5 経験者の条件そのもの(育成枠への切り替え) 法学部出身やパラリーガルなど、素地のある人を育てる方法に変える。 教える人・計画・確認の仕組みを先に用意する。

最後まで下げないもの

残したい項目は2つあります。契約書を読んで論点を言葉にできることと、リスクを事業部に分かる言葉で説明した経験です。法務の価値は法律の知識より「判断して事業部に伝える」力にあります。この2つは入社後に教えるのが難しく、1人目の法務には特に必要です。

未経験・ポテンシャル採用の対象と育てる前提

未経験を候補にする場合は、どんな経歴の人が素地を持っているかを先に整理します。

候補の経歴 強み 足りない部分 育て方
法学部の出身者 法律の基礎知識を持つ。 実務の経験がなく、契約書の見方に慣れていない。 簡単な契約の審査から任せて、顧問弁護士が確認する。
法律事務所のパラリーガル・事務 契約書や書面の扱いに慣れている。 事業側の目線で判断した経験が少ない。 事業部との打ち合わせに同席させ、判断の理由を言葉にする機会をつくる。
他部門からの異動(営業・総務・経理など) 事業や社内の事情をよく知っている。 法律の体系的な知識が不足している。 外部の研修や書籍で基礎を補い、顧問弁護士の助言を受ける。

未経験を採用するときは、教える人・最初の3ヶ月で任せる範囲・確認の仕組みの3つを先に決めます。法務が自社に一人もいない場合は、顧問弁護士に教える役を頼めるかを採用の前に確かめておく必要があります。体制がないまま未経験を採用すると、本人にも会社にも負担がかかります。

法務の採用手法はどれを選ぶか?

法務の採用手法は人材紹介・求人媒体・ダイレクトスカウト・リファラル・副業や業務委託・採用代行の6つに分けられます。経験者を急ぐなら管理部門に強い人材紹介とスカウト、育成枠を広く募るなら求人媒体が向いています。

手法ごとに費用の型と向く状況が違います。自社の要件と急ぐ度合いに合わせて組み合わせてください。会社名は出さず、種類で書きます。

6つの手法の比較表

手法 費用の型 向く状況 注意すること
管理部門・法務に強い人材紹介 採用が決まったときに年収に応じた手数料がかかる型が多い。 経験者を急いで探すとき。 要件と見送りの理由を共有しないと精度が上がらない。
求人媒体 掲載の期間や枠に応じて費用がかかる型が多い。 経験者と育成枠の両方を広く募りたいとき。 掲載だけでは応募は待ちになる。求人票の書き方で結果が変わる。
ダイレクトスカウト 利用料に加えて、採用時の費用がかかる型もある。 現職で働く潜在層に声をかけたいとき。 返信が少ない。法務に響く文面を作る必要がある。
リファラル・顧問弁護士からの紹介 紹介への謝礼を会社が決める。 社風に合う人を探したいとき。 紹介の候補が限られる。紹介者との関係を考えて選考を進める。
副業・業務委託 月額や時間あたりで契約する。 常勤が決まるまでつなぎたいとき。入社前に仕事ぶりを見たいとき。 社内にノウハウが残りにくい。契約の範囲を明確にする。
採用代行(RPO) 月額固定や成果に応じた費用の型がある。 候補者探しやスカウトの運用を任せたいとき。 要件が固まっていないと効果が出にくい。

採用手法の費用感は採用コストの平均と採用代行の費用相場で整理しています。スカウトの運用はダイレクトリクルーティングとスカウト返信率の平均と上げ方が参考になります。

経験者枠と育成枠で手法を分ける

経験者枠と育成枠を同じ求人票で募集すると、どちらの応募者にも合わない文面になりがちです。経験者枠は人材紹介とスカウトを中心にし、任せる範囲と決裁権限を前面に出します。育成枠は求人媒体を中心にし、教える体制と最初の3ヶ月の計画を前面に出します。

経験者枠の応募が集まらないときは、副業や業務委託の法務人材に契約審査を任せてつなぎながら常勤の採用を進める順番もあります。つなぎの期間に社内で何が法務の仕事なのかが整理されれば常勤の要件も固まります。

顧問弁護士やリファラルからの紹介を使う

顧問弁護士は会社の事情を知ったうえで法務の人材を見ています。法律事務所のパラリーガルや、企業内の法務に興味のある弁護士を紹介してもらえる場合があります。

社員のリファラルはリファラル採用のメリット・デメリットで進め方を整理しています。法務の経験者は他社の法務とのつながりを持っていることが多く、現在の法務担当者がいる会社ではその人脈も候補になります。

法務の求人票とスカウトには何を書くか?

求人票には仕事の範囲と決裁権限・顧問弁護士との分担・使っているツール・働き方・年収の幅を書きます。スカウトでは「なぜあなたなのか」と「入社後に任せる範囲」を書き、定型文は避けます。

候補者が法務の求人で知りたいのは、任される範囲と会社の中での位置づけです。ここでは最低限書くべき項目と、スカウト文の型を1つ示します。

求人票に書く項目

  • 仕事の範囲:契約審査・事業部からの相談・規程の整備・株主総会や取締役会の運営など、実際に担当する業務を具体的に書く
  • 決裁権限:契約の締結を誰が判断するか・法務が事業の意思決定にどこまで関われるか・経営層への報告ルート
  • 顧問弁護士との分担:どんな案件を顧問弁護士に相談し、どこから先は自社で判断するか
  • ツール:使っている契約書の管理ツールや審査の支援ツール。導入の予定がある場合はその計画も書く
  • 働き方:リモートの可否・出社が必要な業務・残業の実態・繁忙期
  • 年収の幅:経験に応じた幅で示し、幅の決め方(経験年数や任せる範囲)も書く
  • 体制と評価:法務の人数・報告先・入社後に何をもって評価するか

「やりがいのある仕事」「成長できる環境」のような、どの会社でも書ける表現は避けます。法務の候補者が知りたいのは、任される範囲・判断できる場面・相談できる相手の有無といった事実です。

スカウト文の型

法務の候補者は現職で信頼され、複数の会社から声をかけられています。定型文は読まれにくいため、次の3点を入れます。

  • なぜあなたに声をかけたのか(経歴のどこに注目したか)
  • 入社後に任せる範囲(契約審査の体制づくりを任せる・事業部の相談窓口を担うなど)
  • 働き方と評価(リモートの可否・決裁権限・評価の基準)

文面の例を示します。会社名・人物は架空です。

件名:契約審査の体制づくりを任せたい、1人目の法務としてのご相談

〇〇様

はじめてご連絡します。株式会社〇〇で人事を担当している△△です。

〇〇様のご経歴の中で、前職で契約審査のフローを整えた経験に注目しました。
当社は事業が伸びる一方で、契約書の確認を顧問弁護士に依頼する流れが
追いつかなくなっています。

入社後に任せたいのは、契約審査の体制づくりと、事業部からの相談窓口です。
契約の締結は、法務の判断を踏まえて代表が決定します。
顧問弁護士とは、訴訟の可能性がある案件のみ相談する分担にしています。
リモートは週3日まで可能です。

まず30分、当社の状況をお話しする機会をいただけないでしょうか。

「成長できる環境です」といった一般的な言葉は入れず、任せる範囲と判断の流れを具体的に書くのがこの型の要点です。

面接では法務の何を見極めるか?

面接では契約書を読んで論点を言葉にできるか・事業を理解しているか・リスクを事業部に分かる言葉で説明できるかを見ます。契約書1本のレビューを課題にすると、法務の経験がない面接官でも判断しやすくなります。

法務は専門性が高く、法務の経験がない面接官では会話だけで力を判断しにくい職種です。質問と課題を事前に決めておくと、面接官が変わっても同じ基準で見られます。面接全体の設計は採用面接の質問例140選で整理しています。

契約書1本のレビューを課題にする

面接の前に架空の業務委託契約書を1本渡し、リスクだと思う点を挙げてもらいます。あらかじめ損害賠償の範囲・契約期間・解約の条件といった論点を2〜3か所仕込んでおきます。

見るのは仕込んだ論点に気づいたかだけではありません。論点に優先順位をつけたか・事業部にどう返すかまで考えたか・分からない点を質問したかを確かめます。法務の経験がない面接官は、顧問弁護士に採点の観点を相談しておくと判断しやすくなります。課題の設計はワークサンプルテストの考え方が使えます。

見極める4つの観点と質問例

観点 見たいこと 質問例
担当した範囲 契約審査や相談対応のどこまでを自分で判断したか。 「前職の契約審査は、誰がどこまで判断していましたか。あなたが最終的に判断した範囲を教えてください。」
事業の理解 当社の事業を踏まえて、法務として何を見るか。 「当社の事業について知っていることを教えてください。契約や規制の面で気になる点があれば聞かせてください。」
事業部への説明 リスクを相手に伝わる言葉で説明できるか。 「事業部が進めたい案件に法的なリスクがあったとき、どのように伝えましたか。」
改善の経験 仕組みを変えて仕事を減らしたことがあるか。 「契約審査にかかる時間を減らした経験があれば、何を変えたか教えてください。」

STAR型の質問例3つ

過去の具体的な場面を、状況(Situation)・課題(Task)・行動(Action)・結果(Result)の順に聞く形です。法務では次の3つが使いやすい質問です。

  • 事業部から強い反対を受けながら、契約の修正を求めた場面を教えてください。(状況と課題を聞き、どう説得したか行動を掘り下げる)
  • 契約書のリスクを見落として、あとから気づいた経験はありますか。そのとき何をしましたか。(誰にいつ伝えたか、再発を防ぐために何を変えたかを聞く)
  • 限られた時間で、複数の契約審査を依頼された場面を教えてください。どの順番で進め、何を後回しにしましたか。(優先順位のつけ方を聞く)

答えが抽象的なときは、「その場にいたのは誰ですか」「あなたは具体的に何をしましたか」と場面に戻して聞きます。STAR型の面接の進め方は、下の資料にまとめています。

選考の速さと辞退

経験者は複数の会社を並行して受けています。結果の連絡を遅らせない・カジュアル面談で現場の責任者と話す機会をつくる、の2点は最低限そろえてください。進め方はカジュアル面談と内定承諾率の記事で整理しています。

【無料資料】STAR型質問面接

法務の仕事はAIでどう変わり求める要件はどう動くか?

契約審査にAIを使う会社が増えると、定型的なレビューは減って判断と事業部への説明が法務の仕事の中心に残ります。要件には「AIツールを使った業務設計ができるか」を足すのが現実的です。

この章に調査の数字はありません。HeaRが採用の設計で考える置き直しの例として読んでください。

契約審査AIで変わること

契約書の確認を支援するAIのツールは、契約書の条項の抜けや不利な条件を候補として示す使い方が広がっています。製品の細かい機能は会社によって違うため、ここでは一般的な使い方に絞ります。

定型的な契約の一次確認は、AIで速くなる可能性があります。一方でAIの指摘をどう判断するか・交渉にどう生かすか・事業部にどう説明するかは人が担います。最終的な責任を負うのも人です。法務の仕事は消えるのではなく、確認の作業から判断と説明に移ると考えられます。

要件の置き直し(HeaRの考え方)

要件 これまで これから
契約書の一次確認の速さ 重視されてきた。 AIで省ける部分が増えるため、必須にしなくてよい場合が多い。
論点の優先順位をつける判断力 経験年数で見ていた。 AIが示した指摘のうち、どれが重要かを選ぶ力として、より重視する。
事業部への説明力 歓迎にとどまった。 判断を相手に伝える仕事が増えるため、重視する。
ツールの使用経験 特定の製品の経験を求めた。 新しい仕組みを試して業務を変えた経験を見る。
業務の設計力 暗黙の要件だった。 AIを入れる範囲と人が確認する範囲を決められるかを、面接で聞く。

面接で聞くAIの使い方

AIの経験を必須にする必要はありません。確かめたいのは新しいやり方を試して仕事を変えようとする姿勢です。たとえば「業務を効率化するために自分で始めた工夫があれば教えてください」と聞きます。AIでなくても契約書の管理や審査のチェックリストの改善で構いません。

AIを使った経験がある人には、どの作業に使い出力をどう確認し機密情報の扱いをどう決めていたかを聞きます。候補者側がAIを使って書類を作る前提の選考設計は、AIで書かれた志望動機・職務経歴書は見抜けるのかで整理しています。

法務は採用するか外部に任せるか?

法務を常勤で採用するか外部に任せるかは、仕事の量と継続性で決めます。仕事が日常的に発生するなら採用が向きます。専門性の高い案件が不定期に出るなら顧問弁護士で、採用までの間をつなぐなら業務委託や外部のサービスが向きます。

採用できない状況が続くと、顧問弁護士に頼む件数が増えて費用がかさみます。どの選択肢が何に向くかを分けて検討してください。

顧問弁護士・法務アウトソーシング・採用代行の使い分け

選択肢 任せること 向く場面 注意すること
顧問弁護士 専門性の高い案件・訴訟・難しい契約の相談。 案件が不定期で、日常の対応は少ないとき。 日常の契約審査まで頼むと件数が増えて費用がかさむ。社内に知識が残りにくい。
法務のアウトソーシング 契約審査・規程の整備など、日常の法務業務。 採用までの間をつなぎたいとき。常勤を置くほどの量がないとき。 会社の事業への理解に時間がかかる。ノウハウが社内に残らない。
副業・業務委託の法務人材 契約審査や相談対応を、決まった時間で担う。 常勤が決まるまでつなぎたいとき。入社前に仕事ぶりを見たいとき。 稼働時間に限りがある。契約の範囲と秘密保持を明確にする。
常勤の採用 日常の契約審査・事業部の相談・規程の整備・体制づくり。 法務の仕事が日常的に発生し、社内に知識を残したいとき。 要件の決め方と面接の設計が必要。採用まで時間がかかる。
採用代行(RPO) 候補者探し・スカウトの送信・日程調整といった採用活動の実務。 法務の採用に人事の手が回らないとき。 要件を先に決める必要がある。

外部に任せることは採用の代わりにはなりません。法務の知識を社内に残したい場合は、常勤の採用が必要です。つなぎの期間に外部の力を借りながら、常勤の採用を並行して進める流れが現実的です。

要件が固まっていない段階では、先に要件の整理から始めてください。要件が決まっていて採用活動の実務が追いつかない会社には、候補者探しやスカウトの運用を任せる選択肢があります。HeaRのAI-RPOは、スカウトの運用や日程調整といった採用活動の実務を任せる選択肢のひとつです。判断が必要な場面だけ社内で対応する形で、費用の目安は採用代行の費用相場で整理しています。

法務採用のよくある質問

Q. 法務の採用はなぜ難しいのですか?

A. 経験者が現職から動きにくく、要件を増やしすぎて対象が絞られ、業務内容が社外に伝わりにくいためです。年収で法律事務所や金融と競合することに加え、1人目の法務は社内に評価できる人がいません。法人向けの調査では、法務・コンプライアンス部門の人材が不足している企業が77.3%ありました。

Q. 未経験者を法務として採用してよいですか?

A. 採用できますが、教える人・最初の3ヶ月で任せる範囲・確認の仕組みを先に決める必要があります。法学部の出身者・法律事務所のパラリーガル・他部門からの異動などが候補です。顧問弁護士に確認を頼める体制があれば、1人目でも進めやすくなります。

Q. 法務に弁護士資格は必要ですか?

A. 必須にしない会社が多くなります。契約審査・相談対応・規程の整備は、資格がなくても担える仕事です。資格が必要な業務を社内で担うかどうかで決め、訴訟など専門性の高い案件は顧問弁護士に任せる分担もあります。必須にすると対象が絞られ、年収も上がります。

Q. 1人目の法務の年収はどう決めますか?

A. 任せる範囲から決めます。dodaの平均年収では、法務は全体で710万円、30代が650万円・40代が795万円でした。これは登録者の現在の年収で、求人の提示額ではありません。求人サイトで同じ役割の求人を数件見比べ、幅を決めて面接官で共有します。

Q. 法務の採用にはどれくらいかかりますか?

A. 期間を示す公表データは確認できていません。要件が固まっていれば短くなり、条件を増やしすぎると長引きます。経験者枠の応募が集まらないときは、業務委託でつなぎながら常勤の採用を進める方法があります。選考の連絡を遅らせないことも、辞退を減らす点で影響します。

Q. 副業や業務委託で足りますか?

A. 仕事の量が少なく、日常的に発生しない会社なら足ります。契約審査が毎週のように発生する、事業部からの相談が多い、社内に知識を残したいという場合は、常勤が向きます。業務委託は入社前の仕事ぶりを見る手段にもなります。契約の範囲と秘密保持は明確にしてください。

まとめ

法務の採用が難しいのは、経験者が現職から動きにくいうえに要件を増やしすぎやすく業務内容も社外に伝わりにくいためです。年収でも法律事務所や金融と競合し、1人目の法務は社内に評価できる人がいません。人材が不足している企業は77.3%(KPMG調査)あり、dodaの「企画・管理」は3.31倍でした。法務だけの倍率は公表されていません。

次にやることは2つです。1つ目は会社の段階に合わせて、仕事の中心・弁護士資格・スペシャリスト型かゼネラリスト型かを決めることです。2つ目は求人票に仕事の範囲と決裁権限を書き、面接に契約書1本のレビュー課題を入れることです。経理など別の職種の進め方は経理の採用が難しい理由と採用方法も参考にしてください。

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監修者

大上 諒

代表取締役CEO

HeaR株式会社 代表取締役CEO。累計250社以上の採用支援に従事し、AI-RPOなど次世代の採用ソリューションを開発・提供。「青春の大人を増やす」をミッションに掲げる。

編集者

HeaR編集部

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HeaR株式会社 編集部。累計250社以上の採用支援で得た知見を発信。

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