採用マーケティングとは?9つのフレームワークと設計手順・成功事例【2026年9月更新】

2024-12-16
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2026-09-14

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を採用に取り入れ、認知から入社までの仕組みを設計する手法です。採用ブランディング・採用広報との違い、9つのフレームワークの使い分け、9ステップの設計手順とKPI、AI活用まで、累計250社以上を支援するHeaRが解説します。(2026年9月更新)

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採用マーケティングとは何か?

採用マーケティングとは、マーケティングの考え方を採用活動に取り入れて「応募者が増え、内定承諾まで導く仕組み」をつくる採用手法です。求職者が自社を認知してから入社するまでを段階に分け、各段階の候補者に合ったアプローチを設計します。

マーケティングが「商品やサービスが売れる仕組みをつくること」を指すのに対して、採用マーケティングのミッションは「候補者が集まり、選考を進み、入社に至る仕組みをつくること」です。求人を出して待つのではなく、候補者の視点で認知から入社までの道筋を描き、各段階で次の段階へ進んでもらう働きかけを行います。

採用マーケティングで扱う範囲は、母集団形成だけではありません。選考中の候補者の意欲を維持し、内定承諾率を高め、入社後の定着まで見据えて設計するのが特徴です。この「入口から出口まで」を一貫して設計する点が、単発の採用施策との違いになります。

採用マーケティングと採用ブランディング・採用広報は何が違うのか?

採用マーケティングは「仕組み全体の設計」、採用ブランディングは「選ばれる理由づくり」、採用広報は「情報発信の実行」です。3つは対立する概念ではなく、採用マーケティングの中に採用ブランディングと採用広報が位置づけられる関係にあります。

比較軸 採用マーケティング 採用ブランディング 採用広報
目的 認知から入社までの仕組みを設計し、応募と内定承諾を増やす 候補者に「この会社で働きたい」と思われる理由をつくる 自社の魅力や実態を候補者に届ける
対象 認知前の潜在層から内定者・アルムナイまで 主にターゲット人材と社会全体 主に転職顕在層と潜在層
主な施策 競合分析・ペルソナ設計・ジャーニー設計・チャネル選定・KPI運用 採用コンセプト・魅力の言語化・ビジュアルやメッセージの統一 採用広報記事・SNS・動画・イベント・採用ピッチ資料
主な指標 応募数・選考通過率・内定承諾率・採用単価 認知度・想起率・応募者の質 記事の閲覧数・SNSの反応・応募数
時間軸 中長期(仕組みとして継続) 中長期(資産として蓄積) 短期から中期(コンテンツ単位)

採用ブランディングの設計方法は採用ブランディングの記事で、採用広報の手法と事例は採用広報の記事で詳しく解説しています。本記事では、この2つを包含する「仕組みの設計」に焦点を当てます。

採用マーケティングはなぜ注目されているのか?

背景は、採用競争の激化・採用手法の多様化・情報のオープン化の3つです。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分)では有効求人倍率が1.18倍、正社員の有効求人倍率は1.00倍と、企業が「選ばれる側」に回る状況が続いています。

1. 採用競争の激化

少子高齢化に伴い、採用競争は激化しています。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年7月分)によると、有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.10倍です。正社員に限っても有効求人倍率は1.00倍で、求職者1人に対して正社員求人が1件以上ある状態が続いています。

優秀な人材であればあるほど、複数の内定を獲得するのが当たり前になりました。企業は「選ぶ」よりも「選ばれる」採用活動をしなければならず、候補者の意思決定に沿って働きかける採用マーケティングが注目されています。

2. 採用手法の多様化

かつては求人広告が応募の主な経路でしたが、現在は採用手法が多様化しています。求人広告、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、SNS採用、オウンドメディアリクルーティング、リファラル採用など、選択肢は増える一方です。

手法が増えるほど、「どの手法で、誰に、何を伝えるか」を整理しないと施策が散らばります。自社の魅力を整理し、打ち出しを明確にする採用マーケティングの考え方が求められる理由はここにあります。

3. 情報のオープン化

就職や転職の口コミサイト、SNSによって、企業情報や採用情報はオープンになりました。候補者は応募前に企業の評判や社員の声を確認し、複数社を比較した上で応募先を選びます。

そうした中で自社が求める人材に選ばれるには、自社の情報を戦略的に整理し、良い面も課題もオープンに伝えていく必要があります。情報を隠すのではなく、伝え方を設計するのが採用マーケティングの役割です。

採用マーケティングに取り組むメリットは?

メリットは、認知度の向上・競合との差別化・採用施策の一貫性の3つです。いずれも「候補者の視点で設計する」ことから生まれる効果で、単発の施策では得にくいものです。

認知度の向上

採用マーケティングを通して、ターゲットからの認知を広げることができます。自社固有の魅力をメッセージとして発信することで、これまで自社に無関心だった候補者にも存在を知ってもらえます。認知が広がれば、転職を考えたときに「そういえばあの会社」と思い出してもらえる確率が上がります。

競合企業との差別化

自社の立ち位置を明確にすることで、競合他社との差別化を図れます。優秀な人材ほど多くの企業からオファーを受けるため、候補者が複数の選択肢で迷う場面は必ず訪れます。採用マーケティングが設計できている企業は、その場面で自社を選んでもらえる可能性が高まり、応募数の増加と選考離脱の防止につながります。

採用施策に一貫性が出る

採用マーケティングを設計すると、候補者へのメッセージに一貫性が生まれます。ターゲットペルソナと発信すべきメッセージの方向性が統一され、候補者体験の各フェーズで「何を伝えるのか」が明確になるためです。結果として、スカウト文面から面接や内定通知まで同じ軸で伝えられ、候補者に自社のメッセージが色濃く残ります。

採用マーケティングのターゲットは誰か?

ターゲットは、自社を知らない人材・選考中の候補者・カジュアル面談後の潜在層・アルムナイの4つに分けられます。転職顕在層だけを追うのではなく、認知前から退職後までを対象にするのが採用マーケティングの考え方です。

1. 自社をまだ認知していない人材

採用マーケティングの最も大きな効果の1つが認知拡大です。自社をまだ認知していない候補者へのメッセージを強化することで、将来の応募者を増やせます。認知の段階では、応募を迫るのではなく「良い会社がある」と記憶に残してもらうことが目標になります。

2. 自社の選考を進んでいる候補者

選考のステップをスムーズに進んでもらうことも、採用マーケティングの重要なポイントです。応募から内定承諾までのストーリーを意図的に設計すると、各段階で候補者が抱く不安に先回りして答えられます。選考通過率と内定承諾率は、この設計の質で大きく変わります。

3. カジュアル面談をしたものの、選考に進まなかった将来の潜在層

エンジニア採用などではカジュアル面談を実施する会社が増えました。面談をしても転職意欲が高くない場合は、一旦タレントプールに置いておくケースがあります。「すぐには転職しないけれども、いつか転職する際に自社を選択肢に入れてくれる潜在層」に対して、定期的に情報を届け続けるのも採用マーケティングの守備範囲です。

4. 自社を退職したアルムナイ候補者

アルムナイ(出戻り採用)は、何らかの理由で自社を退職した人を再雇用する採用手法です。「また戻ってきたい」と思ってもらうためには、退職後も自社の変化や魅力が伝わる状態をつくっておく必要があります。退職者コミュニティやニュースレターは、そのための代表的な施策です。

採用マーケティングの設計手順は?(9ステップ)

設計手順は、体制構築から効果測定までの9ステップです。順番のポイントは「誰に届けるか(ペルソナ)」と「競合の中でどう見えるか(競合分析)」を、チャネルや施策より先に決めることにあります。

1. 体制構築と運用方針の策定

採用マーケティングを推進するためには、時間と人材が必要です。まず推進チームを結成し、プロジェクトの目的と運用方針を決めるところから始めます。「いつまでに」「何を」「誰がやるのか」は最低限決めておきましょう。人事だけで完結させず、現場や広報を早い段階で巻き込むのが成功の前提です。

2. ターゲットとペルソナの策定

「誰に届けるのか」によって、採用マーケティングの進め方は変わります。候補者の職種、年齢やレイヤー、在籍している企業のイメージ、年収帯、転職先に求めていることを言語化し、対象を明確にします。ペルソナの設計シートと記入例は採用ペルソナの作り方の記事にまとめています。

3. 競合分析

続いて、自社のポジショニングを明確にします。ターゲットが「応募したい」と思う競合企業はどこなのかを、まず分析しましょう。自社の採用状況、実際に入社した社員の併願先、他社の採用情報など、複合的な情報から進めるのがポイントです。具体的な手順は採用競合の分析方法の記事で解説しています。

4. 自社の魅力の整理

競合が明確になったら、自社の魅力を整理します。ここでのポイントは、競合と比較したときに自社が勝てる打ち出しを色濃くすることです。差別化点(PoD)を見つけていくと、自社独自の魅力が見えてきます。魅力の分類には、後の章で紹介する採用の4Pが役立ちます。

5. コンセプトメッセージの策定

一貫したメッセージを伝え続けることで、候補者にメッセージが届きます。競合分析と自社の魅力の整理を踏まえ、採用活動全体を貫くコンセプトメッセージを策定しましょう。スカウト文面・採用サイト・面接での訴求が、このコンセプトから枝分かれする状態が理想です。

6. キャンディデートジャーニーマップの設計

認知・訴求・調査・行動・推奨の各フェーズにおける候補者の行動と感情を整理し、現在の施策と今後実行すべき施策を明確にします。フェーズごとに「候補者は何を知りたいか」「自社は何を用意できているか」を並べると、施策の抜け漏れが一目で分かります。作り方はキャンディデートジャーニーマップの記事をご覧ください。

7. ファネルに応じたチャネルの選定

各選考フェーズにおいて、候補者の意欲を高める効果的なチャネルを選定します。フェーズごとの目標と代表的なチャネルは次のとおりです。

フェーズ フェーズの目標 代表的なチャネル・コンテンツ
認知 「あの会社、なんか良いな」と好印象を持ってもらう インタビュー記事(人・組織・事業・待遇)、求人票、プレスリリース、Webメディアへの露出、社員のSNS、検索流入、YouTube、コーポレートサイト
応募 複数社を比較している候補者の応募意欲を高める 求人票、ダイレクトリクルーティング、採用サイト、採用広報記事、テックブログ、採用ピッチ資料、カルチャーデック
選考 魅力と課題の両方を伝え、安心して選考を進んでもらう 採用ピッチ資料、採用広報記事、面接での一貫した訴求
内定・入社 内定承諾率を高め、入社までの不安を解消する オファーメッセージ、採用広報記事、内定者フォローの面談

選考フェーズでは、自社の魅力だけではなく課題も含めて伝えることが大切です。オンラインとオフラインの採用体験に一貫性を持たせると、候補者は安心して選考に進めます。内定を出した企業は自社だけとは限らないため、内定後のフォローも欠かせません。

8. 施策の実行とコンテンツ制作

チャネルが決まったら、コンテンツを制作して実行に移します。最初から全チャネルを動かすのではなく、ペルソナが最も接触するチャネルから着手し、反応を見ながら広げていく進め方が現実的です。制作したコンテンツは、スカウト文面や面接でも再利用できるように設計しておきましょう。

9. 効果測定と改善

フェーズごとのKPIを設定し、月次で振り返ります。数値が伸びない箇所を特定し、ペルソナ・メッセージ・チャネルのどこに原因があるかを切り分けるのが改善の基本です。KPIの設計は後の章で表にまとめています。

採用マーケティングに活用できるフレームワーク

採用マーケティングでよく使うフレームワークは9つあります。分析系(3C・SWOT)、魅力整理系(採用の4P・PoD/PoP)、ターゲット系(STP・ペルソナ)、導線系(キャンディデートジャーニーマップ・採用ファネル・5A)に分けると、どの場面で何を使うかが見えてきます。

3C分析

3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの観点から分析を進める手法です。採用マーケティングでは、Customerを「Candidate(候補者)」に置き換え、候補者・採用競合・自社の3つの側面から整理します。

候補者については転職で重視することや市場の動き、競合については採用手法や待遇、自社については採用における強みと弱みを書き出します。この分析を行うと、自社の立ち位置や競合に勝っている点、候補者のニーズが一枚にまとまります。使いどころは、設計手順の競合分析と魅力整理の入口です。

採用の4P

採用の4Pは、自社の魅力を「Philosophy(理念)」「Profession(事業・仕事)」「People(人・文化)」「Privilege(待遇・働き方)」の4つの視点から整理するフレームワークです。候補者が企業を選ぶ理由はこの4つに大別できるため、魅力の洗い出しと訴求の設計に使えます。

4つの視点で魅力を書き出したあと、ペルソナが重視する視点に比重を置いてメッセージを組み立てます。詳しい使い方は採用の4Pの記事で解説しています。

SWOT分析

SWOT分析とは、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの要因から自社を分析するフレームワークです。採用マーケティングで用いる場合は、Strengthを「自社の採用上の強み」、Weaknessを「弱み」、Opportunityを「採用市場の変化による機会」、Threatを「市場変化による脅威」と置き換えて整理します。

使いどころは、年度の採用戦略を立てるときの棚卸しです。強みと機会が重なる領域に注力し、弱みと脅威が重なる領域は採用手法や訴求で補う、という判断の材料になります。

STP

STPは、「Segmentation(市場の細分化)」「Targeting(狙う層の選定)」「Positioning(立ち位置の設計)」の3段階で戦略を組み立てるフレームワークです。採用では、候補者市場を職種・経験・志向で細分化して自社が勝てる層を選びます。その層の中で競合とどう違って見えるかを決めるのがPositioningです。

「良い人なら誰でも」という採用は、結果的に誰にも刺さりません。STPで狙う層を絞ると、次に紹介するペルソナの解像度が上がり、チャネルとメッセージの選択にも迷いがなくなります。

ペルソナ

ペルソナは、自社が最も採用したい人物を「特定の1人」として描いた人物像です。年齢や経験だけでなく、転職動機・価値観・情報収集の行動まで作り込みます。採用マーケティングの全施策は、このペルソナに向けて設計されるため、9つの中で最も土台になるフレームワークです。

HeaRでは10項目の設計シートを使い、Best/Better/Normalの3段階で経験の幅を持たせます。記入例と作り方の5ステップは採用ペルソナの作り方の記事をご覧ください。

キャンディデートジャーニーマップ

キャンディデートジャーニーマップは、候補者が自社を認知してから入社するまでの行動・思考・感情を時系列で可視化する図です。フェーズごとに候補者の接点(タッチポイント)を並べ、どこで意欲が上がり、どこで離脱しやすいかを特定します。

使いどころは、設計手順の6番目にあたる施策の棚卸しです。マップ上で接点が薄いフェーズが、次に打つ施策の候補になります。作り方とテンプレートはキャンディデートジャーニーマップの記事にまとめています。

採用ファネル

採用ファネルは、認知→興味→応募→選考→内定→入社の各段階に候補者数を当てはめ、段階ごとの転換率を見る考え方です。マーケティングのAIDMAやAISASと同じ発想で、「どの段階で候補者が減っているか」を数字で捉えます。

使いどころは、効果測定と改善です。応募数が足りないのか、選考の途中で離脱しているのか、内定辞退が多いのかで打ち手は全く異なります。ファネルで詰まりの位置を見つけてから、該当フェーズのチャネルやメッセージを見直します。

PoD/PoP(差別化点と共通点)

PoD(Point of Difference)は競合にはない自社だけの魅力、PoP(Point of Parity)は競合と同水準で備えておくべき条件です。HeaRの採用コンサルティングでは、3C分析と採用の4Pで洗い出した魅力を、このPoDとPoPに仕分けてコンセプトメッセージを策定しています。

PoPが欠けていると、候補者は比較の土俵にすら乗せてくれません。逆にPoDが無いと、土俵には乗っても最後に選ばれません。「まずPoPを満たし、PoDで選ばれる」という順番で訴求を設計するのが使いどころです。

5A(カスタマージャーニーの5段階)

5Aは、フィリップ・コトラー氏が提唱した「Aware(認知)」「Appeal(訴求)」「Ask(調査)」「Act(行動)」「Advocate(推奨)」の5段階で顧客の行動を捉えるフレームワークです。採用に置き換えると、候補者が自社を知り、魅力を感じ、口コミや社員の発信で調べ、応募し、入社後に周囲へ薦めるまでの流れになります。

5Aの特徴は、入社後の「推奨」まで含める点です。社員がリファラルやSNSで自社を薦める状態を目標に置くと、採用広報と定着施策がつながります。キャンディデートジャーニーマップのフェーズ設計にも、この5段階をそのまま使えます。

9つのフレームワークの比較表

フレームワーク 使うフェーズ 所要時間の目安 向いている企業・場面
3C分析 戦略(現状分析) 半日〜1日 採用戦略を初めて言語化する企業
SWOT分析 戦略(棚卸し) 半日 年度の採用方針を決める場面
採用の4P 魅力整理 1〜2日(社員ヒアリング込み) 魅力が言語化できていない企業
PoD/PoP 魅力整理(差別化) 半日(3Cと4Pの後) 競合と比較されて負けることが多い企業
STP ターゲット 半日 複数職種・複数層を同時に採用する企業
ペルソナ ターゲット 1〜2日(現場ヒアリング込み) すべての企業(他の全施策の土台)
キャンディデートジャーニーマップ 導線 1日 応募後の離脱や内定辞退が多い企業
採用ファネル 導線(計測) 継続(月次) 数値で改善したい企業
5A 導線(全体像) 半日 採用広報とリファラルをつなげたい企業

所要時間は、HeaRが支援の現場で実施するときの目安です。9つ全部を一度に使う必要はありません。次の章で、課題に応じた選び方を整理します。

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採用戦略のフレームワークはどう選ぶのか?

選び方の軸は「いま詰まっている課題がどこにあるか」です。応募が来ないのか、応募は来るが選考で落ちるのか、内定を出しても辞退されるのかで、使うべきフレームワークは変わります。最初の1つを選ぶなら、どの課題でもペルソナから着手するのが確実です。

採用の課題 原因の仮説 最初に使うフレームワーク 次に使うもの
応募がそもそも来ない ターゲットが広すぎる、認知されていない STP → ペルソナ 採用の4P・キャンディデートジャーニーマップ(認知フェーズ)
応募は来るがターゲット外が多い 訴求が一般論になっている ペルソナ 3C分析・PoD/PoP
選考の途中で離脱される フェーズ間で伝える内容に断絶がある キャンディデートジャーニーマップ 採用ファネル(離脱位置の特定)
内定を出しても辞退される 競合と比較されて負けている 3C分析 → PoD/PoP 採用の4P(決め手の言語化)
何から手をつけるべきか分からない 現状が整理されていない SWOT分析 3C分析・ペルソナ
採用広報の効果が見えない 指標が施策とつながっていない 採用ファネル 5A・キャンディデートジャーニーマップ

フレームワークは分析のための道具であり、埋めること自体が目的ではありません。分析結果を採用戦略に落とし込む流れは採用戦略の立案の記事で、競合の洗い出し方は採用競合の分析方法の記事で解説しています。

採用マーケティングのKPIはどう設計するか?

KPIは、ファネルの段階ごとに「数」と「転換率」を置くのが基本です。最終目標(採用人数・採用単価)だけを見ていると、どこを直せばよいか分かりません。認知から入社までの各段階に指標を置き、月次で詰まりの位置を特定します。

フェーズ 主なKPI 計測手段の例
認知 採用サイト・採用広報記事の閲覧数、SNSのインプレッション、指名検索数 アクセス解析ツール、SNSの分析画面、検索コンソール
興味・応募 応募数、スカウト返信率、カジュアル面談の設定数、応募経路別の応募単価 採用管理システム、媒体の管理画面
選考 書類通過率、面接通過率、選考辞退率、選考期間 採用管理システム
内定・入社 内定承諾率、内定辞退理由の内訳、採用単価 採用管理システム、辞退者アンケート
定着 入社後の定着率、早期離職率、オンボーディング完了率 人事システム、入社後アンケート

指標は多ければよいわけではありません。最初は各フェーズ1〜2個に絞り、施策と指標が1対1で結びつく状態をつくります。数値が動かない場合は、ペルソナ・メッセージ・チャネルのどれが原因かを順に疑うと、改善の議論が具体的になります。

採用マーケティングを成功させるポイントは?

成功のポイントは、メッセージの一貫性・現場の巻き込み・小さく始めて計測すること・課題も伝えることの4つです。いずれもHeaRが累計250社以上の支援で、成果が出た企業と出なかった企業を分けてきた要因です。

  • メッセージの一貫性を保つ:スカウト文面、採用サイト、面接、内定通知で伝える軸を揃えます。認知フェーズで伝えた魅力が面接で一度も出てこないと、候補者は不信感を抱きます
  • 現場と経営を早期に巻き込む:候補者が最も聞きたいのは「一緒に働く人」の話です。人事だけで作ったメッセージは現場の実感と乖離しやすく、面接で矛盾が露呈します
  • 小さく始めて計測する:全チャネルを一度に動かすと、何が効いたか分かりません。ペルソナが最も接触するチャネルから始め、ファネルの数値を見ながら広げます
  • 魅力だけでなく課題も伝える:良い面だけを訴求すると、入社後のギャップで早期離職につながります。課題をオープンにすると、課題解決に意欲のある候補者が集まり、ミスマッチも減ります
  • 半年に一度は設計を見直す:採用市場も自社の状況も変わります。ペルソナとメッセージが現状に合っているかを、採用が一区切りつくたびに確認します

採用マーケティングにオススメのツール

ツールは、発信の場(Wantedly・note・X)、接点をつくる場(イベント・ウェビナー)、候補者データを管理する場(タレントプール・MAツール)、採用サイト上で対話する場(AIチャットボット)の4種類に分けて選びます。

1. Wantedly

Wantedlyは、給料や待遇などの条件ではなく、やりがいや環境を伝えて「共感」で企業と求職者をマッチングするビジネスSNSです。ストーリー機能で採用広報記事を投稿でき、採用マーケティングの認知フェーズと応募フェーズの両方で使えます。

2. note

noteは、文章や画像、音声、動画を投稿できるメディアプラットフォームです。採用広報記事の発信に使いやすく、法人向けのnote proでは独自のページを作ることができます。社員の人柄や仕事の裏側を継続的に発信する場として、多くの企業が活用しています。

3. X(旧Twitter)

X(旧Twitter)では、採用担当や現場のメンバーが実名で発信するケースが増えています。候補者から見ると「会社の中の人」が分かる点が強みで、認知フェーズと調査フェーズで効果を発揮します。発信の型を決め、無理のない頻度で続けることがポイントです。

4. イベント/ウェビナー

オンライン・オフラインの採用イベントもオススメです。自社の専門性の高さを伝えるイベントを開催すると、成長意欲の高い潜在層に認知を広げられます。参加者はそのままタレントプールに登録し、後述のツールで継続的に接点を持ちます。

5. タレントプールツール

カジュアル面談をした候補者や、イベント参加者を管理するツールです。数カ月後に連絡するリマインドを設定でき、潜在層との関係を維持できます。HERP Nurtureなどの専用ツールのほか、採用管理システムのタレントプール機能でも代替できます。

6. HubSpot・Marketo

主にマーケティングオートメーションのツールとして知られていますが、採用マーケティングでも活用できます。タレントプールに入れた候補者に定期的にメールマガジンを配信し、クリック率を見ながらアプローチするなど、デジタルマーケティングの手法をそのまま採用に持ち込めます。

7. 採用サイトのAIチャットボット

採用サイトを訪れた候補者の質問に、AIチャットボットが24時間対応するツールです。候補者は応募前の疑問をその場で解消でき、企業は問い合わせの内容から候補者の関心を把握できます。HeaRのRecruit-botは、パーソナライズ採用サイトとAIチャットボットを統合したプロダクトです。選び方は採用サイト向けAIチャットボットの記事で解説しています。

採用マーケティングにAIはどう使えるのか?

AIは、候補者データの分析・スカウト文面の生成・採用サイトのパーソナライズの3つの場面で使えます。いずれもAIが下準備を担い、ペルソナの設計やメッセージの最終判断は人が担う分担が前提です。

候補者データの分析

応募経路別の応募数や選考通過率、辞退理由のテキストなどをAIで集計・分類すると、ファネルの詰まりの位置と原因の仮説が短時間で出ます。従来は人事が表計算ソフトで数日かけていた作業を、月次の定例で回せる粒度に落とせます。

スカウト文面の生成

ペルソナとコンセプトメッセージが決まっていれば、候補者の職務経歴に合わせたスカウト文面の下書きをAIで生成できます。HeaRのAI-RPOでは、AIがスカウト文面の生成や書類審査を担い、専属チームがターゲティングの判断と品質確認を行う体制で採用業務を代行しています。サービスの詳細はAI-RPOのサービスページをご覧ください。

採用サイトのパーソナライズ

候補者の属性や閲覧行動に応じて、採用サイトで見せるコンテンツを変える手法です。エンジニア志望者にはテックブログを、営業志望者には営業組織の紹介を優先して表示すると、ジャーニーマップで設計した「フェーズごとに伝えたいこと」をサイト上で実装できます。AIチャットボットと組み合わせると、候補者の疑問への回答までサイト内で完結します。

AIを使う際の注意点は、ペルソナやメッセージの設計そのものをAIに任せないことです。自社の現場を知らないAIが作ったメッセージは一般論になりやすく、候補者には見抜かれます。分析と下書きはAI、判断と対話は人、という分担を守ることが成果につながります。

採用マーケティングの参考事例

採用マーケティングを実践している企業の参考事例を3社ご紹介します。いずれも、コンセプトメッセージ・コンテンツ・発信の継続が一貫している点が共通しています。

SmartHR社

「これからのSmartHRが、一番おもしろいと思う」というコンセプトメッセージで、自社の魅力を端的に訴求しています。テックブログなどの更新も頻繁で、職種ごとの動きが見えやすくなっています。コンセプトと日々の発信がつながっている好例です。

10X社

10X社は、カルチャーデックを作り込むことで採用マーケティングを実践しています。自社が置かれている市場環境から向き合っている社会課題、プロダクトの紹介までをシンプルに伝え、ミドルクラスからハイクラスの応募を集めています。

カルチャーデックの実物は株式会社10X Culture Deck(Speaker Deck)で公開されています。

カミナシ社

カミナシ社はnoteの発信に力を入れています。人事だけではなく現場のメンバーが積極的に発信し、記事が継続的に更新されています。X(旧Twitter)などのSNSと連携しながら認知を広げており、「現場の巻き込み」を体現している事例です。

よくある質問

Q. 採用マーケティングとは何ですか?

A. マーケティングの考え方を採用に取り入れ、候補者が自社を認知してから入社するまでの仕組みを設計する採用手法です。求人を出して待つのではなく、認知・応募・選考・内定の各段階で候補者に合った働きかけを行い、応募数と内定承諾率を高めます。

Q. 採用ブランディングや採用広報とは何が違いますか?

A. 採用マーケティングは仕組み全体の設計、採用ブランディングは選ばれる理由づくり、採用広報は情報発信の実行です。採用マーケティングの中に採用ブランディングと採用広報が含まれる関係で、対立する概念ではありません。

Q. フレームワークはどれから使えばよいですか?

A. ペルソナから着手するのが確実です。誰に届けるかが決まらないと、他のフレームワークの分析結果を施策に落とし込めません。ペルソナの次は、応募が来ない課題なら3C分析と採用の4P、選考離脱が多い課題ならキャンディデートジャーニーマップが有効です。

Q. 中小企業やスタートアップでも採用マーケティングは必要ですか?

A. 必要です。知名度で大手に勝てない企業ほど、狙う層を絞って自社だけの魅力を届ける採用マーケティングの効果が大きくなります。予算をかけずに始められる施策も多く、ペルソナ設計と採用の4Pによる魅力整理は社内の工数だけで実施できます。

Q. 効果が出るまでどのくらいかかりますか?

A. 設計に1〜2カ月、施策を回して数値に表れるまでにさらに3〜6カ月が目安です。認知フェーズの施策は効果が出るまで時間がかかる一方、選考フェーズのメッセージ改善は次の採用サイクルから効きます。短期と中長期の施策を組み合わせて進めましょう。

Q. KPIは何を設定すればよいですか?

A. ファネルの段階ごとに「数」と「転換率」を置きます。認知は閲覧数、応募は応募数とスカウト返信率、選考は通過率と辞退率、内定は承諾率、入社後は定着率が代表的です。最初は各段階1〜2個に絞り、施策と指標が1対1で結びつく状態をつくります。

Q. 採用マーケティングの設計を外部に依頼できますか?

A. できます。採用コンサルティング会社が競合分析やペルソナ設計、コンセプトメッセージの策定を担い、社内での実行を伴走するのが一般的です。HeaRでは3C×4P分析とPoD策定の独自メソッドで、戦略設計から実行支援まで提供しています。詳しくは採用コンサルティングのサービスページをご覧ください。

Q. AIで採用マーケティングは何が変わりますか?

A. 候補者データの分析、スカウト文面の下書き、採用サイトのパーソナライズが自動化され、人事は判断と候補者との対話に時間を使えるようになります。一方で、ペルソナやコンセプトメッセージの設計をAIに任せると一般論になりやすいのが注意点です。分析と下書きはAI、判断は人という分担が前提になります。

まとめ

採用マーケティングは、候補者が自社を認知してから入社するまでの仕組みを設計する採用手法です。設計手順は体制構築からKPI運用までの9ステップで、その土台になるのがペルソナと競合分析です。9つのフレームワークは、分析・魅力整理・ターゲット・導線の4つに分けて、いま詰まっている課題に合わせて選びます。

戦略設計の練度がそのまま応募数と内定承諾率に表れるため、最初は時間がかかります。しかし、一度設計した仕組みは翌年以降も使い回せる資産になります。自社の採用マーケティングをどう進めればよいか迷っている方は、採用コンサルティングのサービス詳細をご覧いただくか、お気軽にご相談ください。採用コンサルティング会社の選び方は採用コンサルティング会社30社の比較記事にまとめています。

監修者

大上 諒

代表取締役CEO

HeaR株式会社 代表取締役CEO。累計250社以上の採用支援に従事し、AI-RPOなど次世代の採用ソリューションを開発・提供。「青春の大人を増やす」をミッションに掲げる。

編集者

HeaR編集部

編集部

HeaR株式会社 編集部。累計250社以上の採用支援で得た知見を発信。

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