採用計画とは
採用計画とは、企業が求める人材を効率的かつ確実に採用するために、事前に立てる戦略的な計画のことです。
企業の事業計画や目標にもとづいて、どの部署に何名の人材を、どのようなスキルや経験を持つ人を採用するかを具体的に決定します。
採用計画を立てることで、企業は採用活動を無駄なく進め、求める人材を確保しやすくなります。
また、採用計画は単に採用活動の方針を示すことにとどまらず、経営戦略の一環として企業の成長を促す重要な役割を担うものです。
採用計画の重要性
採用計画を立てることは、企業の採用活動において重要です。
効果的な採用計画を策定することで、採用活動を効率的に進め、目標を達成するための基盤を築くことができます。
ここでは、なぜ採用計画が企業にとって重要なのか、具体的な理由を見ていきましょう。
採用活動の進捗状況を把握するため
採用活動を計画的に進めることで、その進捗状況を常に把握することができます。
採用計画を策定する際には、各ステップごとに目標やスケジュールを設定するため、計画と実際の進捗を比較して、どこに遅れや問題が生じているかを素早く特定できます。
早期に対策を講じることで、採用活動がスムーズに進むため、最終的な採用目標を達成しやすくなります。
関係者間で目標・タスクを共有するため
採用計画を立てることで、採用に関わる全ての関係者が共通の目標とタスクを持つことができます。
採用活動においては、経営層、人事担当者、現場の責任者など、複数人が関わりますが、それぞれが同じ方向を向いて動くためには、共通の認識が欠かせません。
採用計画により、全員が目標を理解し、各自の役割を明確にすることで、円滑なコミュニケーションと効率的な業務遂行を実現します。
採用コストの無駄を省くため
採用活動を進めるうえで多くのコストがかかりますが、計画的に進めることで無駄な支出を抑えることができます。
採用計画を通じて、どの段階でどれだけのコストが必要かを事前に見積もることで、予算内で効率的な採用活動が可能になります。
一方、計画がないまま採用活動を進めると、過剰な求人広告費や、無駄な面接コストが発生することもあります。
採用計画を立てることで、コストの最適化が図られ、採用活動全体の費用対効果を高めることが期待できるでしょう。
【5ステップ】採用計画の立て方
採用計画を立てる際には、企業のビジョンや目標にもとづいて、戦略的に進めることが重要です。
ここでは、基本的な採用計画の立て方を5つのステップに分けて解説します。
ステップ1.採用の目的・目標を明確にする
採用計画を立てる際、初めに行うべきことは、採用の目的と目標を明確にすることです。
企業がなぜ採用を行うのか、その背景を理解し、具体的なポジションや人数、期限を設定することが重要です。
例えば、新規事業の立ち上げにともない、特定のスキルを持つ人材が必要である場合、いつまでに何名の採用が必要かを明確にします。
採用目的や目標が明確であれば、採用活動全体がぶれることなく、ゴールに向かって真っ直ぐに進められるでしょう。
ステップ2.採用者のペルソナ・採用要件を明確にする
次に、採用する人材のペルソナと採用要件を明確にします。
どのようなスキルを持ち、どのようなタイプの人材が企業にとって適切かを具体的に定めます。
例えば、営業職であれば、コミュニケーション能力やヒアリング力などが求められる場合が多いでしょう。
また、企業文化に合う人材を選ぶためには、仕事に対する志向性や価値観を考慮することも大切です。
この段階でしっかりとした採用要件を設定することで、採用プロセス全体がスムーズに進み、適切な人材を見つけやすくなります。
ステップ3.採用スケジュールを検討する
続いて、具体的な採用スケジュールを検討していきます。
採用の最終目標(いつまでに、何人、どんな人を採用するか)から逆算して、各選考ステップをどのようなタイミングで進めるか計画を立てます。
例えば、採用活動の開始から内定出しまでにどれくらいの期間が必要か、説明会の日程、面接に向けてスケジュールなどを組み立てます。
また、説明会の開催頻度や面接の回数に応じて、担当者の人数やリソースの配分も検討しましょう。スケジュールがしっかりしていれば、採用活動がスムーズに進行しやすくなり、不測の事態があっても臨機応変に対応しやすくなります。
ステップ4.予算に合わせて採用手法を検討する
採用スケジュールが決まったら、予算に応じて最適な採用手法を選びます。
例えば、求人メディアを利用する場合、各社の特徴や料金を比較した上で、慎重に検討する必要があります。また、人材紹介会社を利用する場合は斡旋手数料が掛かりますし、リファラル採用(社員紹介)を導入する場合は奨励金も検討すべきです。
その他、近年では求職者へ直接スカウトを送る「ダイレクトリクルーティング」、自社採用サイトを活用した「オウンドメディアリクルーティング」、SNSを活用した「ソーシャルリクルーティング」も注目されています。
ただし、それぞれの手法にはメリット・デメリットがありますし、すべてを取り入れようとするとリソース不足に陥りがちです。
それぞれの特徴を踏まえ、比較検討した上で、予算内で最大の効果を得られるように計画しましょう。
ステップ5.採用計画書にまとめる
採用計画書とは、これまでに立てた採用目標、要件、スケジュール、予算などのすべてを文書としてまとめたものです。
この計画書は、採用活動を進める際の指針となり、関係者全員が共有すべき重要なドキュメントです。
採用計画書を作成することで、採用活動の進捗を確認しやすくなり、必要な修正や改善を素早く行うことができます。
また、計画書は自社の採用活動の基盤として情報資産となるため、体裁や管理方法も含めて慎重に作成を進めることが大切です。
採用計画を立てる際に確認しておきたいこと
採用計画を立てる際には、計画を実現するために必要な情報を事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
ここでは、採用計画を立てる際に事前に確認しておきたい2つのポイントをご紹介します。
採用希望職種の採用相場・難易度を確認する
採用希望職種の採用相場や難易度を確認することは、採用計画を成功させる上で欠かせません。
採用市場では、職種によって採用難易度や採用コストの相場が異なります。例えば、ITエンジニアなどの技術職は人材不足が深刻で、採用一人あたりに掛かる費用も高額です。
とりわけ競争の激しい業界・職種では、適切な給与水準や条件を設定しないと、優秀な人材を確保することは容易ではありません。
採用相場や難易度を事前に確認し、それにもとづいて適切な条件を設定することで、スムーズな採用活動を実現できます。
採用競合の採用活動状況を確認する
採用計画を立てる際には、競合他社の採用活動状況を確認することも重要です。
競合他社がどのような条件や手法で採用活動を行っているか把握することで、自社が採用市場でどのポジションにいるか客観的に把握できます。
例えば、競合他社が積極的にリファラル採用を進めている場合、自社も同様の手法を検討する余地があるでしょう。また、競合の採用条件やキャンペーンなどを参考にしながら、自社の採用活動を差別化し、より魅力的な条件を提示することが求められます。
このように、競合の動向をしっかりと把握し、それにもとづいて採用戦略を調整することで、市場内での競争優位性を保つことが可能です。
採用計画を立てたあとに検討すべきポイント
採用計画を立てた後は、計画にもとづいて実行していきますが、計画どおりに進むことはほぼないといって良いでしょう。
進捗状況や問題点を振り返りながら、柔軟に対応するための体制や仕組みを整えることが重要です。
ここでは、採用活動を成功に導くために検討すべきポイントを4つ解説します。
採用代行(RPO)、採用支援サービスの活用
採用計画を実行する際、社内リソースだけで対応しきれない場合には、採用代行(RPO)や採用支援サービスの活用を検討することが効果的です。
採用活動には多くの工数がかかり、特に初期段階の応募者対応やスクリーニングなどは、時間と労力を要します。
採用代行や採用支援サービスを利用することで、外部の専門業者に委託し、社内リソースを重要な業務に集中させることができます。
また、採用支援サービスは、最新の採用ノウハウやソリューションを提供してくれるため、採用の効率化や質の向上にも繋がります。
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採用代行(RPO)サービス選定を失敗しないための“ 5つのポイント ”
適切なATS(採用管理システム)の選定
採用活動の効率を最大化するためには、適切なATS(採用管理システム)の選定も欠かせません。
ATSを導入することで、応募者のデータ管理、選考ステータスの可視化、スケジュール管理などが一元化され、業務の効率化が図れます。
また、システムによっては、AIを活用して応募者のマッチ度を分析する機能や、面接のスケジュール調整を自動化する機能もあります。
自社に合ったATSを選ぶことで、採用プロセス全体のスピードアップと精度の向上を実現できるでしょう。
現場の社員を含めた協力体制の構築
採用活動を成功させるためには、人事部門だけではなく、現場の社員を含めた全社的な協力体制の構築が重要です。
社内採用プロジェクトを立ち上げ、経営層から現場社員まで一体となって採用に取り組むことで、より効果的な採用活動が可能になります。
具体的には、現場の意見を取り入れた採用要件の設定や、社員によるリファラル採用の推進、社員との座談会、体験入社、内定者フォローなど全社を巻き込んだ取り組みが求められます。
協力体制を築くことで、企業全体として優秀な人材を確保するための基盤が整います。
振り返りのタイミングの検討
採用計画は一度作成して終わりではありません。計画を実行する中で、進捗状況を振り返り、必要に応じて修正を加えることが重要です。
採用活動がうまくいっているのか、計画通りに進んでいるのかを定期的に確認し、改善点があれば迅速に対応することで、計画が「絵に描いた餅」にならずに済むでしょう。
定期的に振り返りを行うことで、採用ノウハウが蓄積され、次回以降の採用計画にも反映させることができるため、採用力向上に繋がります。
採用目標を達成するためのコツ
採用目標を達成するためには、従来の採用手法だけではなく、時代にあわせて新しい手法を取り入れることも大切です。
ここでは、採用目標を達成するためのコツを4つご紹介します。
カジュアル面談を実施する
カジュアル面談とは、正式な選考プロセスに入る前に、候補者と気軽に会話をする場を設けることです。
この方法を取り入れることで、候補者が企業の雰囲気や文化を理解しやすくなり、企業とのミスマッチを減らすことができます。
また、カジュアル面談を通じて、候補者が持つ不安や疑問に事前に答えることができるため、候補者の応募意欲を高める効果も期待できます。
結果として、応募から採用までのプロセスがスムーズに進み、採用目標の達成に近づくことができます。
オンライン面接を導入する
オンライン面接の導入も、採用活動を効率化し、目標達成に寄与する重要な手法です。
オンライン面接を活用することで、物理的な距離を超えて、多くの候補者と接触することが可能になります。
特に遠方に住む優秀な人材や、スケジュールの調整が難しい候補者に対しても、柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
また、オンライン面接は移動に掛かる時間や交通費を削減できるため、採用活動全体の効率を高めることができます。
より多くの候補者と接触するために、採用活動において欠かせない施策といえるでしょう。
採用SNSで情報発信する
採用SNSでの情報発信も、採用目標を達成するための有効な手段です。
今やSNSは、多くの人々が日常的に利用しているサービスであり、企業が自社の魅力や採用情報を発信する場としても最適です。
例えば、SNSを通じて、活躍する従業員の雰囲気や社内イベントの様子などを発信することで、企業カルチャーを伝えることができ、求職者の興味関心を惹くことができます。
また、SNSで継続的に情報発信をすることで、潜在層との接点を増やせるため、より多くの候補者にアプローチできます。
自社の強み・魅力を明確にする
採用活動において、自社の強みや魅力を明確にすることは、採用目標を達成するための最も基本的かつ重要なポイントです。
求職者に対して、企業の価値やビジョン、他社にはない独自の魅力を的確に伝えることで、候補者が自社に興味を持ち、応募につながりやすくなります。
特に、競争の激しい採用市場では、自社の強みを明確にして、他社との差別化を図り、優位性を示すことが欠かせません。
それらの魅力を伝えるために、具体的なアクションプランに落とし込み、採用活動のあらゆる場面で伝えることで、自社の企業カルチャーにマッチした人材採用の成功へとつながります。
採用計画を振り返る際のポイント
採用計画は一度立てて終わりではなく、定期的に振り返ることで、目標達成に近づくことができます。
ここでは、採用計画を振り返る際のポイントを4つ解説します。
採用計画に無理はないか
採用計画を振り返る際に、まず確認すべきポイントは、計画に無理がないかどうかです。
計画を立てた当初は現実的に見えた目標やスケジュールでも、実際に進めてみると無理があったと感じることがあります。
例えば、短期間で大量の採用を目指す場合、日程が急ぎすぎて対応の質が低下したり、担当者に過剰な負担がかかったりする場合があります。
このような問題を避けるためには、計画が現実的に可能であるかどうかをしっかりと振り返り、必要に応じて計画を修正することが大切です。
希望通りの候補者が来ているか
希望通りの候補者が集まっているかどうかも確認すべきポイントです。
採用計画の中で設定したペルソナや採用要件に合致する候補者が集まっているかを評価することで、採用活動が適切に行われたかを判断できます。
もし、期待していた人材が集まらなかった場合は、求人情報の内容や募集チャネル、選考プロセスに問題があった可能性があります。
これらを見直し、次回の採用活動に向けて改善策を講じることで、より効果的な採用が実現できるでしょう。
選考辞退・内定辞退の理由を把握できているか
採用プロセスの中で、選考辞退や内定辞退が発生した場合、その理由を把握しておくことも重要です。
辞退が発生した理由が明確でないままでは、同じ問題が繰り返される可能性があります。
例えば、面接の過程での対応や、提示した条件が候補者にとって魅力的でなかった場合、その原因を特定し、改善策を検討する必要があります。
選考辞退や内定辞退の理由を正確に把握し、次回の採用活動に活かすことが大切です。
ただし、選考を辞退した候補者が必ずしも本音を話すとは限りません。
正直な声を聞かせてもらえるように、選考過程で信頼関係を築くことも意識しましょう。
採用コストの掛け方は適切だったか
採用活動にかかったコストを算出し、適切であったかを振り返ることも重要です。
計画段階で予算を設定し、その中で何にどれくらいコストがかかったかを評価することで、費用対効果を確認できます。
例えば、求人広告や採用イベントに多額の費用を投じたものの、結果が伴わなかった場合、そのコストの使い方に問題があったと考えられます。
逆に、比較的低コストで効果的な採用ができた場合は、その手法を次回以降も活用するべきです。
適切な採用コスト管理は、採用活動全体の効率を左右することはもちろん、企業経営においても重要な要素であるため、しっかりと振り返りしょう。
採用コストの算出方法やコストを抑えるポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。
参考:採用コストは一人当たりいくらが適正?算出方法やコストを抑えるポイントを解説
まとめ
採用計画は、企業の成長と発展を支える重要なプロセスです。
適切な計画を立てることで、必要な人材を効率的に確保し、採用活動全体の質を向上させることができます。
本記事でご紹介した5つのステップを参考にしていただくことで、採用活動が効率的に進められるでしょう。
また、採用計画は一度立てて終わりではなく、常に振り返りと改善が求められます。
ぜひ、今後の採用活動にお役立てください。